12/23 電話の理由は@しろひつじ ページ23
冬真っ只中、十二月二十三日。
その人からの電話は久し振りだった。
「りぶ……?」
サリシノハラのメロディーと、ディスプレイに表示された「りぶ」の文字。間違いない。
「もしもし」
「あ、A。今から帰るよ」
思わず頬が緩む。今日は特別な日だから、りぶには早く帰ってきて欲しかったのだ。りぶとたくさん一緒に過ごしたかったから、嬉しい。
「今日は早いね、良かった! でもさ、りぶが電話って珍しいね」
「そうだね。なんでか分かるか?」
りぶはいつも仕事から帰る前に連絡をくれる。それを合図に私は夕食を温め直すのだけど、いつもはメール。私は毎日ヨンジュウナナのメロディーを楽しみにしている。
なんでだろう。あっさり諦めるのはちょっぴり悔しい。りぶが電話をかけてきた理由。
そうだな、今日が……。
「結婚して丁度一カ月の日、だから?」
「うん、それも大当たり。だけどあと一つ理由があるんだよね」
まるで子供のような悪戯っぽい声。きっとりぶは電話の向こうで笑ってるんだろうな。
その顔を想像するだけで弄ばれたような気になると同時に、微笑ましくも思う。絶対、彼はものすごく可愛らしい顔をしているんだろう。多分本人は自覚していないけど。
普段は普通に格好いいくせに、こういうときだけ可愛い。
好きだな、りぶのそういうとこ。
「A、分かった?」
「えー、微妙」
微妙って何、と彼は笑う。私だって降参するのは嫌だ。
「しょうがないな、じゃあ帰ってからのお楽しみ」
今言わないのね。良いけどさ。帰ってからと言っても会社から家までは歩いて十分程度だし。
やっぱりからかわれてる感じもするのに可愛い。なんだろ、こういうのをアンビバレンツとか言うのかな。
「早く帰ってきてね、これ以上焦らすとかなしだから」
「勿論。じゃ、切るよ」
「ばいばい」
いつも電話はりぶから切る。だけど今日はなかなか切れなかった。
なんで切らないんだろう。
「りぶ? 切らないの?」
返事がない。
一体どういうことが起きたら電話が切れないなんて状況になるの。
首を傾げ、仕方ないから私から切ろうとした、が。
「A、愛してる」
通話終了のボタンに親指が触れる寸前、耳に甘い響きを残して電話が切れた。
今のは、狡いよ。
吐息混じりの優しい声は、消えずにその余韻で私を酔わせる。
駄目、今のは駄目だよ。
溺れてしまうから……
たった一言で。
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マシロ - 更新頑張ってください! (2014年12月2日 21時) (レス) id: 59f4dd536f (このIDを非表示/違反報告)
モノクロメロディ―。(3人目)@ついった(プロフ) - 1コメがとれているはず((初っ端からかっこかわいいりょーくんさんきてのけぞってます、毎日楽しみにさせていただきます…!! (2014年12月1日 22時) (レス) id: 1b9f958ee6 (このIDを非表示/違反報告)
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