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12/21 雪めぐり@あにゅ ページ19

幼馴染のluzが東京に引っ越してから、初めての冬が来た。

相変わらず福井の冬はクソ寒くて、今日も馬鹿みたいに雪が降っている。

白い息を吐きながら、スマホの液晶をタップした。

『………もしもし?A?』

「……やっほー」

数えてきっかり2コール。
聞き慣れた声がスマホ越しに聞こえた。

『え、どしたの?Aから電話なんて珍しい』

すっかり標準語を操れるようになったluzだが、言葉の端々にまだ残る福井独特のイントネーション。

それを聴いて、少しだけホッとする。

「いやー……大した用があったわけじゃないんだけどね。」

『何やそれ』


ただ声が聞きたかった。
luzがすっかり東京の人になって、私のことを忘れてないか確認したかった。

そんな本音を言ってしまえば、きっと幼馴染の関係は崩れてしまうから。


20年。

20年間、ずっと一緒だったんだ。

当然のように21年目を迎えるものだと思ってたんだけど。

どうやらそれは、私の滑稽な思い込みだったらしい。


「東京は?暖かいでしょ?」

『全ッ然。普通に寒い。』

飄々とした話し方。
ふにゃふにゃとした笑い方。
感情を全部詰め込んだような歌い方。

全部、全部大好きだった。

離れたくなかった。
東京になんて行って欲しくなかった。

でも。



ーーluzに歌って欲しかった。

自分が満足するまで歌って欲しかった。



『………A?』

あぁ、やばいやばい。

色々考え過ぎて、喋るの忘れてた。

「……何でもない、よ。」

『嘘。絶対うそでしょ。どしたん?』

「……何でもないってば。」

高まった気持ちが声に乗らないように、必死に息をする。

ふんばれ、私。

『ねえ、なんでいつも俺には何も言わないの?俺がなんかしちゃったん?』

「……違う」

『じゃあなんで、』

「これは、私の問題だから。luzは何も悪くないし、何もしてくれなくて良い。」

ごめんね。

最後にそう言って、通話終了を選択する。

スマホの電源を切ったところで、やっと息をついた。

落ち着いてきたころ、自分の頬が濡れていることに気付き、乾いた笑い声がこぼれる。


……惨めだな。


でも良いんだ。
あのまま話していたら、本音が出てしまう。


こんな気持ち、誰も知らなくて良い。

恋心なんて。

あのたくさん積もってる雪みたいに、そのうち溶けて無くなれば良い。

そんで水蒸気が雲になって、その雲から雨が降って。

その雨が、何も知らない東京のluzの元へ降ってくれ。

@あにゅ→←@シャウトノイズ



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マシロ - 更新頑張ってください! (2014年12月2日 21時) (レス) id: 59f4dd536f (このIDを非表示/違反報告)
モノクロメロディ―。(3人目)@ついった(プロフ) - 1コメがとれているはず((初っ端からかっこかわいいりょーくんさんきてのけぞってます、毎日楽しみにさせていただきます…!! (2014年12月1日 22時) (レス) id: 1b9f958ee6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ツク勢様 x他1人 | 作者ホームページ:ありません  
作成日時:2014年12月1日 20時

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