取り敢えず逃げよ。【五条悟】

5話 ページ6

「かなめー、すごろくしよー」

「するー！」

あまり広くは無い部屋に響く2人の声。
賑やかで大変よろしい事だが、流石にご近所迷惑になってしまう。
お隣の田中さんも渡辺さんも下の平松さんも大丈夫だと笑い飛ばしてくれるだろうが。

「2人ともー、もう少し静かにね？」

「「はぁい！」」

うんうん、元気な返事で大変よろしい。

宣言通りボリュームを少し落として双六をする2人。
この間買ってあげた双六は、子供に大人気なキャラクター、〚ウィンナー左衛門〛のものだ。
アニメは夕方5時から、テレビに釘付けになってくれるおかげで家事が進む進む。
ただ、今日はウィンナー左衛門の無い土曜日。

いつもなら構って構っての2人も双六のお陰で夕飯の支度が出来る。

ピーンポーン

じゃっ、じゃっ、とお米を研いでいれば部屋に響いたのはインターホンの音。

ここはオートロックでは無いし、カメラ付きインターホンでも無い。
だから、「はーい」とドアを開けたその先に誰が居るかなんて気付きもしなかったのだ。

「や、A。久しぶり！」

「人違いです」

出来るだけの力を込めてドアを引くも足を入れて阻止される。
ドアの前に居るのは間違えで無ければ胡散臭さが増した悟君。
間違えじゃないな、本人だわこれ。

「酷いなぁ、A。4年と3ヵ月14日21時間58分32秒ぶりだね！元気してた？」

怖い怖い怖い！！！！
なんで秒数まで覚えてるの怖い！！

私の表情から混乱が見て取れたのか、「マ、ちょっと中に入れてよ。話そっか。」と言って家の中に入って来ようとする。

それを全力で阻止しし、私諸共外に出る。
こんなの、後ろめたい事がありますと叫んでいるような物だ。

「外でなら、話す。中は駄目。」

「えー、なんでよ。外寒いしやだ♡」

やだ♡じゃない！！！！！
何か、何か良い感じの言い訳は...！

「...部屋、汚いから。人に見せれるようなものじゃない。」

「僕、Aの部屋なら汚くても良いよ♡」

「悟君が良くても私が駄目。話がしたいなら外で。」

目隠しの奥にある瞳を見つめる。
まだ、悟君には子供がいる事、バレてない筈。

それさえ隠し通せれば───

「もーいいや。知ってるよ、全部。」

「え？」


「子供が居る事も、女の子の方が奏恵、男の子の方が萃瑠だって事も。」

6話→←4話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す