団長、そろそろ通報していいですか？《 2 》

エピローグ ページ44

．


宇宙は広い。
眼前には数え切れないほど無数の星が輝いて、自分という存在は1粒の砂のように感じる。

だがその感覚が少し好きだったりする。
特別じゃない、何者でもない自分だと思うと、今まで背負ってきた悲しさも痛みもたいしたことなかったかなって思えるからだ。

だから私はよく船内で1番外が綺麗に見えるこの場所で宇宙を眺める。



そんな時コツ、コツとブーツが床を叩く音が響いた。

誰かはだいたい予想がつく。



「A、やっぱりここにいたんだ」

『神威こそ、こんな夜中に起きてるの珍しいね』

あぁ、と気の抜けた声の後に続いたのは衝撃的な言葉だった。


「Aの部屋にお菓子盗みに行ったらいなかったから」

『この前の有名パティシエ監修のシュークリームもお前の仕業だったのか』


あはは、と軽く流して彼は私の隣に座った。

いつもなら喧嘩になりそうな流れだが、今は団員が寝てるので遠慮してあげよう。



「考え事も悪くないけど、夜更かしはよくないよ」

そして最近はそんな優しさも見せてくるから、怒るに怒れないのだ。



『寝ようと思うと逆に寝れなくなるんだよね〜』

「じゃあ俺が強制的に寝せてあげようか？(自主規制)で」




...やっぱり最初からなんにも変わってなかった。


『そろそろ本気で通報していい？』

「そうなったらAも捕まるだろ」



『...じゃあ一緒に牢屋に入ってあげるよ』



逆だ。
私の方が一緒に牢屋に入ってくれることを望んでる。


いっそ共犯にしてしまえばって。


だけど、自分の罪は自分で背負うしかない。
みんなそれぞれ多かれ少なかれ罪を抱えて生きているのだから。


ただその罪に押しつぶされそうになった時、そっと支えてくれたら嬉しいな。








「あー、お腹すいてきちゃったなぁ、なんかないの？」

『部屋にカップ麺ならあるけど』

「はは、夜中にカップ麺なんて罪だね」

『ふふ、だから.....共犯ね』

終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)

←お知らせ・感謝

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す