56話:兎化 ページ21
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背中が何だかあったかい気がして、
次に来たのは背筋に電流が走るような感覚だった。
初めて感じる謎の刺激に、神威を止めようとするも、
出たのは拍子の抜けた声だけ。
「すご…、めっちゃふわふわだ」
そんな神威の楽しそうな声が聞こえて、やっと耳を触られていることに気がついた。
苦痛ではないが、
人間の耳とはまた違うなんとも言えない感覚にどう反応したらいいのか分からない。
とにかく神威の手から逃げるように何度も身をよじった。
「ちょっと、あんまり抵抗しないでよ……、
俺が襲ってるみたいじゃないか」
いや、襲ってるみたいじゃなくて実際襲ってるだろ。
そんなツッコミを心の中で入れるが、
返答をする前に神威はまた気持ちよさそうに猫耳を触り始めたので、
変な感じではあるけど嫌って訳でもないし、
少しくらい触らせてやってもいいかもしれない。
…なんか、ツンデレみたいだな、このセリフ。
ちょっとだけ慣れてきて、だんだん心地よくなり体の力を抜いた瞬間、
「は?!な、何これ…!」
焦ったような神威の声が聞こえて振り返ると、
私から飛び退いた神威が真っ白な蒸気に包まれていた。
『ど、どしたの神威!』
「知らないよ!むしろ俺が聞きたい!」
みるみるうちに神威は白い煙に覆われ、今はほとんど見えなくなってしまっている。
「…っ、煙たっ!」
必死に神威が手で煙を払っているとだんだんシルエットだけは見えるようになってきて、
少しずつ見えてきた神威の姿に私は驚愕した。
『……か、神威、それ』
今度は神威の頭の上に、うさぎの耳が生えてからだ。
私の態度から何かを察した神威は洗面台の方に走っていき、
数秒後には叫び声を上げていた。
『かわいい……』
何あれ、めっちゃかわいい。
夜兎族という名前だってこともあり神威のうさ耳を想像したことは一度や二度はあったが、
あれは想像以上だった。
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「…可愛いって言われたくないんだけど」
感動しているといつの間にか神威が後ろに立ってそんなセリフを言うが、
うさ耳なんてかわいいと言わざるを得ないだろう。
神威のことをじっと見つめながら、また「かわいい」と一言こぼすと、
私の体は一瞬にしてベッドの上へと投げ出されていた。
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もへじ(プロフ) - さざんかさん» そう思っていただければ嬉しい限りです。綺麗な形で終わりは迎えられませんでしたが、最後まで読んでくれて、こちらこそありがとうございました! (3月27日 21時) (レス) id: e33c6b9410 (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - お気持ちに共感します🥲虚無感のようなものを抱いた作家は、何も言わずに幕を閉じることが多いのに、あなた様は我々読者を慮って下さった🥲✨️本当にありがとう!あなた様はまさしく、神作家だ🥰ときめく話と幸せをありがとう! (3月27日 15時) (レス) @page44 id: 0d4c90c531 (このIDを非表示/違反報告)
もへじ(プロフ) - Seleneさん» コメントありがとうございます。そうですね、体調崩さない程度に頑張ります! (2022年8月24日 17時) (レス) id: da658d90ee (このIDを非表示/違反報告)
Selene(プロフ) - お星様が足りません!お体に気をつけてください!待ってます (2022年8月21日 1時) (レス) @page42 id: 447a5b673e (このIDを非表示/違反報告)
もへじ(プロフ) - さざんかさん» コメントありがとうございます!この作品をそんな風に思っていただいて本当に光栄です。これからも応援よろしくお願いします!返信遅れて申し訳ありませんm(_ _)m (2022年3月6日 8時) (レス) id: 89a3943bf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もへじ | 作成日時:2020年8月5日 12時