団長、そろそろ通報していいですか？《 2 》

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『神威ーー！

とりっくおあとりーとー！』



バーン！と大きな音を立てて扉を開けると、

寝起きの神威が迷惑そうにこっちを見ていた。




｢…どしたの？そんな格好して。

あぁ、今日がハロウィンなんだっけ？｣



『うん！お菓子をくれなきゃイタズラするぞ！』





私は知ってる。


神威の部屋の冷蔵庫には、

他の団員は持ってないような高級チョコもあるし、潰してしまった星から持ってきた限定品もある。





負けず嫌いの神威のことだから、イタズラなんて許すはずがない、お菓子はくれるだろう。









そう思って自信満々に仁王立ちすると、神威がちょっと楽しそうに笑った。



｢ふーん、



…A、こっちおいで｣



そして単純な私は手招きされてすぐに寄っていってしまう。


まさか、一緒に食べるとか？

そんな淡い期待を抱き、ルンルンで神威の膝の上に座った。




｢…じゃあ、







イタズラ、してみてよ｣


こんな展開になるとは知らずに。









『……は？』


｢trick or treatだろ？俺はイタズラの方を選ぶね｣


『え、いやいや、ここはお菓子をくれる流れじゃ…』


｢流れとか知らないし。

ほら、早くイタズラしなよ｣




神威に私の拳が通用するはずもないし、用意していたわけもないので何をすればいいか分からない。


そもそもイタズラってなんだ？何すんの？

ハロウィンってお菓子もらうだけじゃないの？







(…、そうだ！)




体の向きを反対にして神威と向かい合わせになった。




そのまま脇の下に指を入れて、くすぐると神威は笑い死ぬ…





｢残念。俺効かないんだよね。


あーあ、俺にイタズラできる大事な機会失っちゃた｣



と思ったら、神威は余裕そうに私のことを見下ろすだけで、何のダメージもない。





もう知らねーよ。

ハロウィンとか初めてなんだけど。

よく分かんないんだけど。




自暴自棄になりかけた私に神威はまた追い打ちをかけた。




｢今度は俺の番。


trick or treat、お菓子をくれなきゃイタズラするぞ？｣






(…しまった！)


お菓子はここに来る間に全部食べてしまってもう残っていなかった。


『え、えぇっと……後で…』



｢何？無いの？




じゃあ………イタズラ、だね｣


そう言って舌なめずりをした神威の表情を私は忘れないだろう。



もう下手にハロウィンはやらないと心に誓った。

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