第四十四話 ページ44
「全くなんなの、高杉のやつ!ほんっとーに偉そうに失礼しちゃうわ!」
荒々しく開けられた屋上の扉。
なんだなんだと視線を向ければ、そこには仁王立ちをしている滝先生がいた。
視線が合った瞬間、古びた椅子に座っている私の方へズカズカと歩きながら高杉に対する愚痴を漏らしている滝先生。
至極面倒だとばかりに溜息を吐きながら声だけで先生へ反応する。
「生徒の愚痴ですか。大変ですね」
「AもAで“何かあったんですか”の一言くらいあっても良くない?」
「はいはい、じゃあ何があったんですか?」
端的に答えた私の返答が気に入らなかったのか、覗き込むようにして滝先生から飛び火が来た。
やりきれない気持ちを込めて後頭部を掻きつつ再度先生の望む言葉をかけて問い直す。
「あの子達に協力してもらう為に三万八千円も使ったのに私が犯人だって!ありえなくない!?ったく高杉のヤツ!」
「高杉らしいですね」
脳裏にその時の様子を空想して微笑する。
そもそも三万八千円も使ってまで何故大魔王をつきとめたかったのか気になったが、だいたい察しがつくので言葉は控えた。
「だいたいなんで私が大魔王なんかに・・・・・・」
「ドンマイ」
未だブツブツ言っている滝先生の肩を軽くポンッと叩いて席を立つ。
そして出口の方へ足をすすめた。
「って、どこいくのA」
「一応生徒なんで」
振り返らずに言葉だけ投げ、ホームルームの始まるクラスへ戻っていった。
そして、その翌日。
ホームルーム前に廊下でとぼとぼと哀愁を漂わせ手歩いている杉先生がいた。
特にそれを気にすることなく普通に歩けば、先生の隣を通過する瞬間に蚊の鳴くような声で声をかけられて足を止めた。
「やっぱり大魔王は教師の中にいるのかな・・・・・・」
自信のない声で呟く杉先生。
振り返ってみれば今にも泣き出しそうな子供のように弱々しくなっている。
けれど、事実は事実。
「ま、高杉達の言う通りでしょうね。ならことが生徒に知れ渡る前にどうにかした方がいいんじゃないですか?」
「そう簡単に言うけどなぁ・・・・・・」
認めた上で私なりに改善策を提案したが、そう簡単にいけば妬み嫉みの類いは世の中に蔓延ったりしないわけで、それを聞いた杉先生も肩を落として溜息を吐いた。
要は誰が大魔王なのかわからない限りはこちらにはどうする手立てもないのだ。
そう思いながら教室へ入ると、沢渡達と書き込みをしていた町田さん達が揉めていた。
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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します! (2020年6月19日 20時) (レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています!3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです! (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nanase。 | 作成日時:2020年4月11日 1時