第三十一話 ページ31
「やっぱり警察に――」
「あっ！杉先生！こっちこっち！」
消えてくれない不安に心が揺れ言葉が静かに漏れた瞬間、それを見計らった様に杉先生が現れた。
息を切らして颯爽と登場した杉先生は私を見るやいなや私の肩を掴み、
「Aは危ないからここにいろ！先生が何とかするから！」
と言って勇ましい表情をしている。
しかしさっきまで図書館に閉じ込められてた人に何とか出来るなんて到底思えない私は苦笑いをするしかなかった。
そして滝先生と杉先生と私でようやく倉庫の中へと駆け出すると
「久坂！大崎！」
「先生！」
大崎さんの悲鳴にも似た声に傷だらけの久坂が私の眼に飛び込んできた。
そういったことには耐性もなく、見るだけでも息が詰まってしまう程耐えきれない弱い私はただ口元を押さえ、目を見開いて硬直する。
そこへすかさずヤンクミだとか莫迦な発言で相手の気を逸らし側に駆け寄った滝先生と杉先生。
不良高校生へ対抗しようとした杉先生は、暴力事件を起こしてしまえばクビという痛い部分を突かれて殴ろうとした拳を止めた。
「オラ、立てや」
「久坂！」
その隙に傷だらけの久坂が強引に立たされ、さっきまで硬直していた私の口からは自然と名前がこぼれる。
そして久坂が殴られようとしたその瞬間
「殴るなら俺を殴れ！」
倉庫内に響く程の大きな声でソレを制止させた杉先生。
それを冷やかすように薄ら笑いを浮かべて杉先生の周りに集まる高校生たち。
「俺等結構ストレス溜まってンすよねぇ」
「好きなだけ殴れ。気が済むまで殴れ。その代わり久坂と大崎には今後二度と近づくな」
「ソッチこそあとで警察にチクるとか無しよ？」
「そんな汚い真似はしない！」
そう言い切って真剣な眼差しで高校生へ向き直り、自己犠牲をして久坂を助けた杉先生はいつになく頼もしく格好良く思えた。
けれど、殴られた瞬間の弱音の吐きように関しては私まで冷静になれた程、頼りなさがあった。
「A！危ないからAもこっちに来て！」
久坂と大崎さんを護っていた滝先生が私もと腕を引っ張って杉先生と不良高校生たちから少しばかり距離を取る。
そして、警察に電話する為なのかこの場所から動かないでとだけ言い残して物陰に隠れていった。
その様子を見た私は思いついたようにポケットから携帯電話を取り出して慣れない番号を打つ。
――御願い、出て･･････
携帯電話の握る力を強めて祈るようにコール音を耳に眉間に皺を寄せた。
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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します！ (2020年6月19日 20時) (
レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています！3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです！ (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：nanase。 | 作成日時：2020年4月11日 1時
