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第四話 ページ4

「教師が学校で飛び降りってどうなのよ」

 昨日の校長を思い出し、ボソッと声が出た。
この土手に寝そべって空を眺めてから登校する、そんな私のルーティンではその日の空模様次第で一日の気分も決まってくるというもの。
そんなわけで今日もいつもと変わらず後頭部で組んだ手を枕にして心地よく寝そべっていたその時、何やら頭上で車が止る音が聞こえた。

 なんだと眩しさに目を細めつつ頭を引いて後部座席のドアが開いたその車を見つめる。
すると、中から良いところのお坊ちゃんとでも言える様な出で立ちをした三人組が降りてきた。
小柄な体格に可愛らしい面持ちの子としっかりとした体格に何処か飄々としていそうな雰囲気を纏った子。
そしてその二人に挟まれる様にしていかにもリーダー格と言えそうな茶髪の真面目そうな少年。
謎の雰囲気を醸し出す三人組は何をするでもなく静かに鋭い目つきで第八中学を見ていた。

 何故か急に見てはいけないモノを見てしまった様な気分になり、視線を戻して何事も無かったかのように目を瞑る。
杉先生といいこの三人組といい新学期早々一体何なんだと眉間に皺を作ってふと湧いた疑問に頭を悩ませた。
すると、

「女の子がこんな所で寝そべっていちゃダメだよ。ほら、起きて」

 側でどことなく可愛らしさを持った声が聞こえてくる。
ゆっくりと様子を窺うように片眼を開けると、あの三人組の中に居た小柄な子が私の横で中腰になって手を差し伸べてくれていた。
けれど、不思議な雰囲気を持つ謎な人間に対して不信感を抱かない人間は早々居ないだろう。
差し出された手に視線を移してそう思っていると、その不信感が表情に出てしまったのか苦笑いをされつつ腕を掴まれてゆっくりと立たされた。

「人のことを怪しむ前に自分の行動を省みた方が良いんじゃない?」

「吉田、行くぞ」

 御礼を言おうと口を開いたその瞬間、私の言葉を遮り飄々とした雰囲気の少年が辛辣に言葉を投げてきた。
どういう意味だと静かにその少年へ鋭い視線を向けるが、並び立つ二人に鼻で笑われて終わってしまう。
すると隣に居たリーダー格の少年が私の目の前に居た小柄な少年を呼びそのまま車の中へと戻っていく。
折角の気分を台無しにされ、遣り場のない憤りが私を襲う。

じゃあ、と言って戻っていった少年が車に乗り込んだ所であの三人を乗せた車は発進して行く。
まるで嵐が過ぎ去ったあとの様な感覚を残して消えていった少年達に謎の疑問は消えることはなかった。

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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します! (2020年6月19日 20時) (レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています!3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです! (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:nanase。 | 作成日時:2020年4月11日 1時

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