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第二十六話 ページ26

――そもそもそんなこと俺には関係ない

 キッパリとそう言い切られてしまえば弱い私の心など簡単に折れてしまう。
机に項垂れながらも授業中に何度も大崎さんをチラチラと気に掛けている杉先生を視界に映しながら溜息を吐いた。
心の中で頑張れ高須と今頃同じように授業をしているであろう高須を思い浮かべる。

「何隠した」

 すると、何かを見たらしい杉先生の強張った声が耳に届いた。
今度は何だと訝しげな顔で問い詰められている木ノ内君を視界に映せば、俯いた侭黙っている。
その様子に見せればと沢渡が平坦に声をかければ怖ず怖ずと杉先生へ紙切れが差し出された。

「"皆で万引きしよう"・・・・・・誰がこんなことを・・・・・・」

 そのまま素直に内容を読み上げた杉先生。
丁度久坂の方へも回っていた様で、慌てて内容を見る久坂とその内容を聞いてザワつき始める生徒達。
そこから犯人捜しが始まり、最初に疑われた沢渡は違うと否定した。
やることが幼稚すぎるとまるで頭痛でもするかのようにこめかみに手を当てて溜息を吐く。
すると、入江が静かに立ち上がって口を開いた。

「だってさこの学校は万引きしてももみ消してくれるって聞いたから」

 唐突な入江の発言に目を見開いて固まる。
けれど、凝視してしまった入江の表情からはお遊びで口走っている様にも見えない。

「無かったことにしてくれるんでしょ?」

「だったら皆で万引きしようぜ」

「そんなの可笑しいだろ!」

「可笑しいのはどっちだよ」

 吉田君も加わり、皆を煽るような発言をする入江へ久坂が噛み付いた。
至って真剣な表情で久坂へ反論する入江だが、言っていることは間違っていない。
どちらも実際は間違っている以上入江達が言うことにとやかく言うことは出来ない。

「また今回も無かったことにしたんでしょ?」

「え、沙莉、良かったじゃん!」

 何処か呆れ気味に言い放った吉田君の言葉へ再度ざわつく教室。
けれど、次には良かったと喜びを語る言葉ばかりが大崎さんへ集中した。
何故そう簡単に言えるのか。
今の大崎さんの苦しそうな表情は見えないのかと煩わしい言葉たちへ眉間に皺を寄せる。
そんな中、沢渡だけは良くないと否定的な言葉を投げた。
しかし、

「え、何で?内申書には書かれないんだし――」

 そう言った金沢さんの言葉を耳にした瞬間、私は怒りを堪えきれずに勢いよく机を叩いた。

「何でそんなこともわかんないの・・・・・・何の為に友達やってんだよアンタら」

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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します! (2020年6月19日 20時) (レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています!3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです! (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:nanase。 | 作成日時:2020年4月11日 1時

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