第二十四話 ページ24
「ねぇ、本当はもみ消されることに納得なんてしてないんじゃないの？」
少しの間を空けて静かに大崎さんへ問いかけた。
けれど、その問いに返答はなく依然として重苦しい空気が流れ続ける。
その数秒間、どこか苦しげに目を伏せながら乱暴に椅子へ座り直した大崎さん。
その様子を見て、ソレが今の大崎さんなりの返事だという事がわかった。
「そんな顔するくらいなら最初からやらなきゃ良いじゃん」
「わからないよ誰にも、私のことなんて。そんなこと言う為についてきたならもう出て行って」
「今の高須を試したって無駄だよ。きっと大崎さんの言葉は伝わらない。ソレで言うなら多分杉先生の方が今はまだ伝わるよ」
床に落ちているヘアゴムを拾いあげて手で弄ぶ。
そのまま思ったことを口にして大崎さんの様子を窺った。
けして同調して慰めることだけが優しさではないしそもそも私は優しくはないのでその辺りはきっと大崎さんを見捨てられずに後々首を突っ込むであろうお節介男こと久坂にでも任せておこう。
そう思い、机の上に置いていた鞄を持ち直して出口へ向かう。
そしてドアを開ける前に未だ俯く大崎さんを一瞥する。
「難しいよね〜言葉って。伝えたいことは言えない癖にどうでも良いようなことは簡単に言えちゃうしなんなら嫌なことは知りたくもない程よく伝わるし･･････言葉と感情ってどっちの方が厄介なんだろうね――伝わると良いね、大崎さんの助けてって気持ち」
独り言の様に呟いた言葉は当然返答など来るはずも無く何も無かった様に静寂の中へ消えていく。
なんとも言えない気持ちの侭生徒指導室を出て行こうと取っ手に手を掛けた瞬間、私が開くよりも早く誰かが外から扉を開けた。
「大さ――ってA？何でここに」
笑顔で生徒指導室に入ってきた久坂とその後ろには何故か高杉の姿があった。
本当に期待を裏切らない久坂の問いに軽く微笑しながら手で退けと目の前に佇む久坂を追い払う。
入り口から避けると同時に大崎さんへ笑顔で近づく久坂。
「なんか心配でさ。高杉も」
「え？」
教室へ戻ろうと足を動かした瞬間、久坂から出た想定外の一言に心の声は完全に漏れ勢いよく側にいた高杉を凝視してしまった。
そんな私と打って変わって動揺せずに涼しい顔をしている高杉は一瞬だけ私と視線を合わせたあとにすぐ心配で来た訳じゃないと訂正に入る。
そして側にある生徒指導室の備品机へ歩みよった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します！ (2020年6月19日 20時) (
レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています！3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです！ (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：nanase。 | 作成日時：2020年4月11日 1時
