第二十三話 ページ23
そう言って再び校内へ消えていった高須を目尻に溜息を吐く。
何かとタイミングが悪いことで自分からの定評がある私だが、確かにここで話すよりも生徒指導室へ行った方がいいかと大崎さんへ行こうと声をかけた。
すると、案の定疑問に揺らいだ瞳が向けられる。
「え？」
「言ったじゃん。聞きたい事があるって。指導室なら二人きりになれるしむしろ好都合」
半ば強引に大崎さんの腕を掴んで止っている足を動かせ、校舎内に入る。
やはり噂というものは広まるのが早い様で、私の後ろを歩く大崎さんに対する好奇の視線がちらほらと視界に映って気分が悪い。
何となく居心地が悪そうに目を泳がす大崎さんを目尻にようやく着いた指導室の中へ連れ込む。
とりあえず大崎さんを目の前の椅子に座らせて話せる状態を作り出し、ブレザーのポケットに手を突っ込んで昨日の夕方に久坂から奪ったヘアゴムを握る。
「聞きたいことって？」
怖ず怖ずと様子を窺う様に私の顔を見る大崎さんへ一瞬だけ躊躇いの間を置いてポケットにしまいこんでいたヘアゴムを見せる。
「これ」
「これ･･････――どうしてAさんが･･････」
それをみるやいなや目を見開いて驚く大崎さん。
そして見たくないと言わんばかりに視線を斜め下へ逸らした。
その様子を見てやっぱりそうかと独りでに昨日の疑問を確信に変え、テーブルを椅子にするように浅く腰をかけ、大崎さんの隣でこれ見よがしに上からヘアゴムをかかげて見上げる。
さっきの大崎さんのヘアゴムに対する反応は本当に欲しかった人間のする反応ではない。
「久坂から奪った。欲しかったんでしょ？意外だったなぁ〜。大崎さんがこんな柄のシュシュ選ぶなんて」
薄ら笑いを浮かべながら思ってもいない言葉で大崎さんを挑発する。
中々強引なやり方だとは自覚しているが、本音を言えない彼女には言える様にする何かしらの起爆剤が必要だ。
「ほら、返すよ。なんなら今付けてみる？」
悪戯に言葉を続けて再度大崎さんの目の前へヘアゴムを差し出した。
だが、未だ口を噤んだままの大崎さんに対しゆっくりとヘアゴムを頭に付けようとしたその時、
「――やめて！」
そう言って立ち上がると同時に拒絶反応を示した大崎さんは近づいていた私の手を払いのける。
その拍子にヘアゴムは私の手から滑り落ち、生徒指導室には重苦しい空気が流れ始めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します！ (2020年6月19日 20時) (
レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています！3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです！ (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：nanase。 | 作成日時：2020年4月11日 1時
