第十九話 ページ19
そして最後はあの鉄板仮面こと高杉東一。
どうやら合唱部に所属していたらしい高杉に意外性を覚えつつ、お手並み拝見とばかりに窓際の一番前に立つ高杉を捉えた。
あれだけのことをやってのける男だ。
きっとそこいらの生徒達より歌唱力はあるのだろう。
そう期待して耳を澄ませた瞬間、混ざり合う歌声の中に一際不協和音を奏でる存在がいた。
音痴で済む可愛いレベルのものではない。
最早わざと音を外しているのではとすら思える程の音程の外れ様に私も滝先生も固まる。
その不協和音を奏でている存在はあろうことかあのスーパー中学生のリーダー格である高杉東一ご当人だった。
流石の扇田先生も一時演奏を止めて注意を促したが、いざ再開すればまたも音程が外れている。
その様子にいよいよ堪えきれなくなった私は腹を抱えて笑い出す。
止らない笑い声は合唱部の皆にも聞こえていた様で、滝先生が私の腕を引っ張りながら慌ててその場をあとにした。
結局取るに足らない情報しか掴めなかった私達は落胆し今後お互いに何か情報を入手したときは伝えあうことを約束して私は帰宅するべく校舎から出る。
すると、いつもならこの時間は職員室に居る筈の高須が私の目の前を歩いていた。
「あれ?高須じゃん」
「お〜うA」
「こんな時間に帰るなんて珍しくない?」
「帰らねぇよ。社畜舐めんな。野暮用だよ」
足早に高須の元へ駆け、後ろからひょっこり顔を出して話しかけた。
今は丁度部活動等を終えた生徒が疎らに帰宅している時刻。
学年主任である高須が一体どうしたのかと疑問をぶつければ、何時もの如く鼻で笑いながら軽いヤジが飛んできた。
「野暮用?高須に?学校以外でそんな忙しい人間だったけ?」
「うるせぇ、お前が知らない所で日々苦労してんだよ。ホラ、生徒はとっとと帰った帰った」
"怒らない"ことを人生の目標にしている高須は発言の一つ一つが面白く、個人的には学校内で一番仲の良い先生だと思っている。
故にそんな軽口も叩き合えるのだ。
けれど、そんな高須から感じられる面倒くさそうな雰囲気からきっと何かがあったのだろうと容易に察しはついた。
「Aって人間観察が趣味なの?」
「・・・・・・っ!!」
背後からいきなり聞こえてきた入江の声に勢いよく後ろを振り返る。
すると、そこには先刻まで私と滝先生が尾行していた三人組が立っていた。
何故ここに、と目を見開きながら三人の顔を順番に見渡す。
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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します! (2020年6月19日 20時) (レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています!3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです! (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nanase。 | 作成日時:2020年4月11日 1時