第十八話 ページ18
私は初めて野菜に話しかける人間というものを初めて目の当たりにした。
「立派な野菜になるんだよ。大きくなぁれ、大きくなぁれ」
そう言いながら水をやりつつ野菜達に話しかけて微笑む吉田君。
これがきっと吉田君でなかったら私は純水に頭の中身を心配していたことだろう。
「なんつーか、期待を裏切らない優男ですね。怒らせたら怖そう」
「確かに･･････――よし、次行ってみよう！」
次に私達が向かったのは調理室だ。
調理部なんかに入っているかと疑問が浮かんだが、そもそもあの三人がどの部に入っているかなんて聞いた事もないので当たり前かと一人で納得していた。
そして、窓越しから静かに中を見る。
すると、そこには女子の大群とその中心に入江がいた。
料理人の如き慣れた手捌きでフライパンを操る入江から発せられる必要な調味料を側にいる女子達が嬉々としてフライパンの中へ加えていく。
当の本人といえば、暑苦しいほどの視線を集めているというのに依然気にする様子も無く燃えるぜと言いながら涼しい顔をしていた。
「ある意味見てて暑苦しいな」
初対面の頃から優しさが出ていた吉田君と違ってどうにも高杉と入江は癖があり、とっつきにくい。
きっと私がそう思うのだから向こうも私のことはあまり得意では無いのだろうと勝手に決めつけて敵視している。
そんなくだらない事を考えていると、私達に気付いていたらしい入江はこちらへ手招きをしてきた。
滝先生とそろって訝しげな顔をすれば私の方を指差し、再度手招きをされる。
女子の視線が私に集まる中、居心地が悪いとばかりに肩を窄めて渋々入江の元へ行く。
「何？」
「はい、これ」
そう言って目の前にドンっと差し出された炒飯。
状況を上手く理解出来ずに立ち尽くす私の肩を掴んで無理矢理椅子に座らせる。
「ホラ、食べてみて」
「あ、うん」
催促されるがままに炒飯を口へ運べば、普通の料亭で食べるより遙かに美味しい。
そもそも嫌われていると思っていたばかりに今この状況に独りでに困惑していた。
「普通に美味しい･･････」
思ったまま口に出せば、満足そうに微笑む入江。
案外良い奴なのかもしれないと微笑すれば、背後からやってきた滝先生によって完食する前に席から引っ張り出される。
「ちょっと呑気に炒飯食べてる場合じゃないでしょ！次行くよ！」
「え、ちょっ――ありがとう入江！」
去り際に御礼を言うと、片手を上げながら微笑してくれた。
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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します！ (2020年6月19日 20時) (
レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています！3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです！ (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：nanase。 | 作成日時：2020年4月11日 1時
