第十三話 ページ13
「先生、やる気あんの?」
そう言って私から視線を逸らして杉先生へ辛辣な言葉を掛ける入江。
別に杉先生の味方になる気はないが、こうも一方的なのも好きではない。
何となくどうにかしなければいけないような気持ちに駆られて足りない頭を回し始めた。
すると、茶髪が杉先生へ静かに口を開き、打ち返してこない理由を問う。
それに対して子供相手に本気にはなれないと返した杉先生へ、ソレが本音かと嘲笑う。
そういう意味ではないと強く言った杉先生へまたも竹刀を振りかざして攻撃に入った。
「もう良いだろ!」
あまりに一方的な打ち込みの嵐に遂に耐えかねた久坂が二人の前へ飛び出した。
何となくこの三人のやりたいことというのは判ったような気がする。
きっと不抜けた教師に真っ向から反撃したいのだろう。
けれど、こういった類いのものはどちらが悪いにせよみているだけで胸糞が悪い。
「いい加減離して」
「女子ならもっとお淑やかにしないと」
飛び出した久坂を目尻に、未だ私の腕を掴む入江へ視線を映し言葉を発しながら乱暴に腕を振り払う。
けれど、不機嫌を隠そうともしない私と対照的に入江は飄々とした表情で笑いながら言葉を返してきた。
その様子を鼻で笑い、視線は久坂へ戻して腕組みをする。
「先生死んじゃうよ」
「死ねばいい。志を失った者は最早抜け殻です。抜け殻に教師を名乗る資格はありません」
一切の優しさなど映らない空虚な瞳で杉先生を見下ろし、容赦なくバッサリと切り捨てた茶髪の言葉に至極不本意だがどこか同意している自分がいた。
それに対し弱々しい声音で酷いなと呟きながらゆっくりと起き上がろうとする杉先生。
けれど、三人組から杉先生に対する批判は否応なしに続く。
だが、彼等の言っていることは何も間違っていない。
残された生徒達の悲鳴は何も届いていないのだから。
事実だからこそ杉先生には余計に腹が立つ話なのだろう。
それでも尚、教師になりたかっただけだと言葉を返した杉先生に失笑して視線を窓の外へ移した。
そしてこの剣道場を去ろうと入り口に向かう杉先生へダメ教師と吐き捨てる三人組。
「悔しいですか?悔しいですよね。それならほら――打ってこいや!」
「高杉ッ――!」
そう叫んだ茶髪に呼応し、振り返りながら構えた杉先生は漸く茶髪へ一本踏み込んだ。
面を付けていなかった茶髪の頭上すれすれで竹刀を止め、鋭く睨み合う。
――無様だ
吐き捨てるように呟いた茶髪に続いて三人は姿を消した。
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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します! (2020年6月19日 20時) (レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています!3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです! (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nanase。 | 作成日時:2020年4月11日 1時