幼き日々 ページ24
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彼女の瞳は錆色だった。
金属が錆びたような、血が乾いたような、少し擦れた赤い瞳。
そして彼女自身もそのように認識していた。
「酸化した蒼鉛のような瞳だ」
彼がそう形容するまでは。
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産まれ持った類稀なる容姿。
多少お転婆ではあったが、年相応の愛らしさと彼女自身の聡明さも相まってか、家族や友人知人から深い愛情を一身に受けて育った。
誰からも愛される、可愛らしい少女。
皆が口を揃え、彼女を天使の様だと褒め讃えた。
「おいでおいで、愛しい子」
「ほらこっちよ、クッキーちゃん」
「こんにちはキャンディ！今日も素敵だね！」
皆が彼女の愛らしさに胸をうたれ魅了され、すっかり虜になっていた。
誰も彼も、彼女を甘い名で呼び愛を注ぐ。
「なんて可愛い子なのかしら」
「本当に可愛い子だ」
彼女はひどく愛されていた。
そう。誰からも、ひどく愛されていた。
『パパ、ママ、わたしはここよ』
だが幼い彼女は知らなかった。
その愛故に過保護に守られ、知ることがなかったのだ。
『わたしはここにいるの』
他人を警戒する事を知らなかった。
身を守る術を何一つ知らなかった。
だから愛された彼女は無抵抗で攫われてしまった。
愛されたが故に攫われてしまったのだ。
『むかえにきて。パパ、ママ』
愛され守られ育まれてきた彼女は、聡明ではあったが世界を、悪意を知らずに成長した。
悪意すら彼女を愛してしまう世界だと知らずに、少女になってしまったのだ。
『みんながわたしをほしがるのはなぜ？』
だから汚い人間の欲を知らない。
汚れた欲の満たし方を知らない。
自身が穢される事を知らない。
自身が遊ばれる事を知らない。
彼女は、自分が何故求められるかを知らない。
その時は、まだ。
まだ、何も知らない愛らしい少女だったから。
『みんながわたしをだいじにしてくれるのはなぜ？』
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少女はいずれ大人になる
その過程で全てを知った
自分の価値と他人の欲
それが重なることで
自分が"愛される"と
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にらもやし(プロフ) - ささはらさん» コメントありがとうございます。言葉選びにはとても気を使っているので、楽しんでいただけているようで大変嬉しいです。更新頑張らせていただきます。ささはらさんも勉強頑張ってね…！ (2018年3月4日 19時) (
レス) id: 1d32708f6b (このIDを非表示/違反報告)
ささはら(プロフ) - 事細かな描写への言葉選びが卓越していて、読み進めるのが大変楽しいです。語彙が多いのが羨ましい限りです…。勉強の合間にいつも読ませて頂いています。更新頑張ってください、全力で応援してます。 (2018年3月4日 0時) (レス) id: ed6ccbb613 (このIDを非表示/違反報告)
にらもやし(プロフ) - もろとさん» コメントありがとうございます。美しい、とは勿体ないです…ありがとうございます。とても嬉しいです、これからも精進していきますのでよろしくお願いします (2018年2月15日 13時) (レス) id: 1d32708f6b (このIDを非表示/違反報告)
もろと(プロフ) - 読みはじめて最初に出た言葉が「わぁ！」でした。とても美しくて、読んでいると頭に映像が流れ込んでくるみたいです！凄く好きです。これからも頑張ってください！ (2018年2月14日 20時) (レス) id: 8eb97f1a18 (このIDを非表示/違反報告)
にらもやし(プロフ) - 白玉(つぶあん)さん» コメントありがとうございます。言葉や言い回しにはとても気を遣っているので、そう言って貰えるとニヤついてしまいます。更新頑張らせていただきます (2018年1月3日 21時) (レス) id: 1d32708f6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にらもやし | 作成日時：2018年1月3日 13時
