イブの恋人たち【紫】３ ページ31
「…はい、じゃあ、乾杯」
「ん、今度はなんにや？」
「ん〜、来月のソラの誕生日にかな」
「ははは、俺の誕生日よりそっちが先か」
…クリスマスに、私の再就職に、こうして無事お休みが取れたことに。
今日もお腹いっぱい食べられたことに、お酒が美味しいことに
世界が今日もなんとか回っていることに。
焼き鳥屋さんのカウンターに並んで、もう何度めか、その度に“乾杯の理由”を探しながら
私たちは熱燗の入ったお猪口を合わせた
隅に置かれた筒には、10数本の串が放射線を描くように広がり
その中にはヒカルが絶賛していたつくねの、平たい串も交じっていた。
「…もう今年も終わりやなあ」
「そうだね。お陰様で…」
「んー？」
「お陰様で、いい年になりました」
カウンターに肘をついてお猪口を傾けながら照れ臭さを誤魔化すように笑う
赤くなったその横顔を私は見る
すぐそこにある左の手首には、さっき私が渡した銀色の腕時計が嵌められていて
私の鞄のポケットには彼からもらった、本革の名刺入れが入っていた
あらかたコースを食べ終わっていた私たちは 適度にお店の人にも放っておかれ
お客さんたちの会話が織り成す心地よい喧騒の中で 取り残されてしまったような
…なんだか“しっぽり”という形容詞がぴったりと当てはまるような
そんな時間がゆっくりと流れていた
「…信ちゃんと会えてなかったら私どうなってたかな」
手元のお猪口を見つめながら、私はぽつぽつと話し始める。
…あのまま、実家に引きこもっていたら。
今頃何をしていたんだろうと、たまにふと思う。
「ははは、案外その方が平和やったかもしれんで」
「ちょっと、なんでそんなこと言うの」
彼はすぐこうして茶化すから
人がこう、折角いい感じにこの会をまとめようとしているというのに
「…信ちゃんと会えてなかったら私笑うことすら忘れてたよ」
「…お酒飲んで美味しいなとかさ、こういう徳利とお猪口のセット家にも買ったら楽しいかな後でネットで探してみようかなとかさ、そういう気持ちも一切なかった」
「…生きるって、こういうことなんだと思った」
私はお酒を煽りながら一気に話す
奇跡みたいだった、
こんなふうに当たり前に毎日働いて当たり前に彼が笑って、当たり前の休日を過ごせていることが。
「…だから」
「…だから本当に感謝してる」
…だめだ、なんだか
自分で言いながら泣きそうになるーー…
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…！引き続きよろしくお願いします！ (2020年6月2日 17時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます！ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます！ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー！！信五最強説です…！そしてビリヤード！素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん！コメントありがとうございます嬉しい！ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2019年8月18日 23時
