精霊の絵 ページ30
「やっば、遅くなっちゃったね、大丈夫？」
「うん、今日は彼氏も飲んでから帰るって連絡あったから」
繁忙期も抜けかけたイブのイブ、仕事帰りに私の最寄駅でご飯を食べた後、ヒカルと並んで夜道を歩いていた。
一つ先の駅に住んでいる彼女は、途中まで私と同じ道を選ぶ
“あ！ ちょっと待って”と急に止まるから何かと思ったら、“歩いた分経験値が上がる”というゲームを起動していた。
「…ヒカルの人生って楽しそうだね」
「何それ、彼氏持ちの嫌味？」
「…ううん、本当にいいなって」
ピンクと灰色のハイテクスニーカーで跳ねるように歩く彼女は、同じ女性なのに、自分とは真逆の生き物に思えた。
「私だってげろげろに落ち込むことくらいあるよ」
「…そんな時どうするの？」
「ん〜、大体はね、どっか路上でぼんやり空見上げながらタバコ2本分延々考えて、それ以外はスパッと切り替えるだね」
“だらだら引きずりたくもないけど、考えるのもやめたくないんだよね”
…三歩先を歩きながらそう言う彼女は、やっぱり、どこか信ちゃんに似ている気がした。
「明日彼氏とデートでしょ？ 鳥匠だっけ」
「そう、ヒカル行ったことあるんだっけ」
「“女一人でカウンター焼き鳥”ルポでね…いいなあ、美味しかったな あそこのつくね…」
記憶の中の味を手繰り寄せるように
彼女は夜空に両手を掲げて呟く
「あ、私ここ左」
「あ、そーなの？ じゃ、明日楽しんでこいよ！」
Y字路で、私たちは手を振り合う
明日はお休みをもらっているから、また会えるのは明後日ーー…
「あ…ねえ、ヒカル、これ！」
私は慌てて取り出す、鞄の中に潜ませていたそれを
…先週末一人で信ちゃんへのプレゼントを買いにデパートへ行った時に
通りかかった1階、フレグランスコーナー
「まじか…dyptiqueじゃん」
色々嗅いで、ミントとオレンジの香りが瑞々しくて華やかで、ヒカルっぽいなと思った。
「うわ、ラベルも可愛い」
「うん、えっとね、ギリシャ神話に登場する“黄金の林檎”が実る果樹園だったかな、それを守る女の精霊の絵だって」
店員さんに聞きかじった知識を話すと
路上で箱から取り出した彼女は自分の手首に吹きかけ、“いい匂い”と笑った。
「私なんも用意してなかったわ…今度お返しする！」
「ふふ、うん」
「じゃあ、明日楽しんでね！」
ヒカルはさっきの別れ際と同じ言葉を繰り返し
また笑って大きく手を振ったーー…
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…！引き続きよろしくお願いします！ (2020年6月2日 17時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます！ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます！ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー！！信五最強説です…！そしてビリヤード！素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん！コメントありがとうございます嬉しい！ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2019年8月18日 23時
