滲む灰色【紫】 ページ27
「…ねえ信ちゃん」
「うん？」
「…今日、病院お休みだったりしないよね」
「ん？ なんで？ 別に普通やったけど」
「ん…だよね、ごめん大丈夫、私お風呂入ってくるね」
“男の人だったから彼氏じゃない？”
…夜、飲み会があったからと遅い時間に帰宅した彼に尋ねるも
一縷の望みは、あっさりと断たれたーー…
シャワーを浴びる
銀色のレバーを目一杯押し上げ
一番高い所から勢いよく噴射する熱いお湯を頭から浴びる
「ーー…」
…すべて、洗い流して欲しかった
この胸の奥に巣食ってしまった不安も、疾しさも
すべて、全部ーー…
…私が進もうが忘れようが追いかけてくるのだ、結局
どんなに太陽が照る日だろうと
日陰の水溜りがいつまでも乾かぬように
「ーー…」
…来週は、クリスマスで
信ちゃんが予約してくれたのは鶏は鶏でも日本酒の美味しい焼き鳥屋さんで
“ええやろがい、日本でいっちゃん鶏肉うまい店やで”って笑って
本当は私のために無理やりお休みを取ってくれたのを知っていた
きっと
“せーの！ メリークリスマース！”
“うわ、めっちゃええやん！ 僕毎日着る!!”
“…俺のこと好き？”
…
“やってシャンパン開けるの夢やったんやもん”
“さすがに似合わへんかな”
“あー…ごめんなあ、手がすべってもうた…”
ヤスくんとも隆平さんとも、苦しい記憶しかないクリスマスを塗り替えてくれようとーー…
湧き上がる涙はお湯に紛れ排水溝へと流れ
その無慈悲さが頼もしくて私は声を殺して泣く
…彼に、呆れられるのが怖かった
この胸の内をまた打ち明けて
いつまでもぐずぐずと悩んでいることを悟られて いい加減、見捨てられるのが怖かった
…もう ひとりで打ち克てるようにならなくてはと
あの人の笑顔に、
正面から向き合える自分になりたくてーー…
「ーー…」
その時、背後でがらりと音がした
「ーー…信ちゃん？ どしたの…」
振り返ると
上下スウェット姿の彼
憮然とした顔で…
ずかずかと
そのまま、狭い浴室に押し入りーー…
「…お前、なんかあったやろ」
「ーー…」
「なんで言わんのや」
水勢を保ったままのシャワーが
彼のスウェットを 少しずつ濃いグレーへと変えていたーー…
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…！引き続きよろしくお願いします！ (2020年6月2日 17時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます！ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます！ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー！！信五最強説です…！そしてビリヤード！素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん！コメントありがとうございます嬉しい！ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2019年8月18日 23時
