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誘拐犯の自白【青】 ページ28

「ははっ、これで僕も立派な誘拐犯やんな」


笑いながらそう言って 連れてこられたのは、車で15分走った先にある、ヤスくんの家だった。


玄関前で部屋に入るのを躊躇していた私に、

「なんもせんから大丈夫やで、ほらこの家、ゴムないし!」

というなんともリアクションの取りづらい後押しをして、彼のペースに巻き込んでくる。



通されたのは、噂通り 物が多くて賑やかな部屋だったけど、足の踏み場がない、なんていうことはもちろんなくて、

ベッドではなく、きちんとソファに案内してくれた。


暖房を入れ、私の上着を預かると きちんとハンガーにかけてくれて、

「あったかいもん飲むー? お茶でええ?」と聞いてくる。


あまりにもやさしい、誘拐犯だった。



渡された海の色をしたマグカップで両手を温めていたら、

ヤスくんも自分のぶんのお茶を持ってきて、ソファの下、私の斜め前にゆっくりと腰掛ける。



あぐらをかいて、ずずず、とゆっくりとお茶をすすって、一息ついて。


その温かさを、確かめるようにしながら、

伏し目がちなまま、


「会いたかった…」


と小さな声で つぶやいた。



……胸が、くるしかった。




「ごめんな、急に…」


そう言って、ヤスくんは顔を上げ、こちらを見つめながら話しはじめた。


“今日、たまたまな、見てしもたんよ”

“渋やんのスマホに、Aちゃんからの連絡がきとるんを”


“ほんま、最低やな……ごめんなさい”

“やけど…うだうだしてんの、性にあわんから…”


“ちょっと、Aちゃん 借りよう思って…待ち伏せしてもーた”



……さっきは「さらいに」だったのが、「借りに」に変わっていた。



そこまで明るく話していたヤスくんは、一瞬だけ顔を崩して目をそらし、言葉を詰まらせると、

また、気を取り直したように笑顔を作って、こう言った。



「渋やんと……戻ったん、やな」

ふたつの質問【青】→←財布をくれた猫【Side緑】



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たまご(プロフ) - ななさん» なな様、うれしいコメントありがとうございます^ ^ すばるくんとの旅行、一緒に楽しんでくださいね^ ^ (2018年1月11日 1時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - あくあさん» あくあ様、いつもありがとうございます! 青さん派のあくあさんには申し訳ないですが、不器用すぎる赤さんとの旅行、一緒に楽しんでいただけるとうれしいです! (2018年1月11日 1時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - psycheighterさん» psycheighter様、コメントありがとうございます^ ^ 有り難いお言葉、うれしいです…! 彼らも大人なので、こんな恋愛していてほしいという、私の願望が詰まっておりますが…笑、最後までお付き合いいただけるとうれしいです。 (2018年1月11日 1時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 今1番更新が楽しみな小説です。私はすばる担なのですばるくんと幸せになったらいいなぁとドキドキしながら読ませて頂いてます! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 6cdacb0f72 (このIDを非表示/違反報告)
あくあ - ほんと不器用すぎて切なすぎる。けど、それも赤さんっぽさが出てていい。あぁ〜映画化してほしい。笑 (2018年1月10日 23時) (レス) id: 4e4eb3dcc1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たまご | 作成日時:2018年1月2日 17時

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