左手のトイレットペーパー【青】 ページ25
別れ話をして それを無効にされるという、あまりにも非効率的なやりとりは、儀式のように数回繰り返されたけれど、結局 力尽きることとなった。
私の根負けだった。
以前と同じように、彼に呼び出され、それに無条件に応えるだけという生活に戻っていた。
忙しい時期のはずなのに、その頻度はむしろ上がっていて、それが二日、三日と続くことすらあった。
私たちは 終わり時を見失ったゲームをしているみたいだった。
今日もまた、仕事が終わり 家に帰る電車の中の私に連絡が届く。
了解。終電で向かいます
遅い時間だから、今日も食事をすることはないだろう。
私は少し考えて、
昨日切れかけてたから、トイレットペーパーだけ買っていくね
と補足するように送り、アプリを閉じた。
LINEのアイコンの左上には、ずっと「未読１」のマークがついたままだった。
開く勇気もなく、消す決意もされないまま、その送り主のトーク画面は下のほうへ沈んでいく。
それなのに「１」の数字だけはいつまでも 心をざわめかせつづけ、
このまま何もなかった日々に戻れると思うなよ、と、私を責めてくる気がした。
時間があったから一旦家に帰り 支度をしてまた家を出る。
彼の家の最寄り駅前にあるコンビニでトイレットペーパーを買い、通い慣れた道を歩く。
なんでもない住宅街にさえ、クリスマスの予感は華やぎを添えていたけれど、今日は特別寒かったから、私は少し、早足で歩いた。
酔った乗客たちのせいで終電が少し遅れてしまったから、彼はもうとっくに家に帰っているはずだ。
オートロックのある玄関に急いで駆け込もうとしたら、そのそばに人影が見えた。
この寒いのに 誰かを待っているのだろうか。
中に入ればいいのに…
逆光で顔の見えなかったその人を避けるようにして、玄関に入ろうと思ったら、右目の端にちらりと、その人の顔が映る。
急ブレーキをかけた私は信じられず、そのままその場に立ち尽くした。
「…Aちゃん、久しぶりやな」
「……」
「…元気、そうやな」
「……どう、して…？」
「んー？ ちょっと、渋やんにトイレ借りようかと思って」
「……彼、部屋にいなかった…？」
「…うそ」
「Aちゃん、さらいに来た」
そしてヤスくんは私の右手を掴み、そのまま勢いよく走り出した。
その時 弾みで落ちたトイレットペーパーを、玄関の外に転がしたまま。
火種の匂い【Side緑】→←さりげない業務連絡【Side青】
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たまご(プロフ) - ななさん» なな様、うれしいコメントありがとうございます^ ^ すばるくんとの旅行、一緒に楽しんでくださいね^ ^ (2018年1月11日 1時) (
レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - あくあさん» あくあ様、いつもありがとうございます！ 青さん派のあくあさんには申し訳ないですが、不器用すぎる赤さんとの旅行、一緒に楽しんでいただけるとうれしいです！ (2018年1月11日 1時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - psycheighterさん» psycheighter様、コメントありがとうございます^ ^ 有り難いお言葉、うれしいです…！ 彼らも大人なので、こんな恋愛していてほしいという、私の願望が詰まっておりますが…笑、最後までお付き合いいただけるとうれしいです。 (2018年1月11日 1時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 今1番更新が楽しみな小説です。私はすばる担なのですばるくんと幸せになったらいいなぁとドキドキしながら読ませて頂いてます！ (2018年1月11日 0時) (レス) id: 6cdacb0f72 (このIDを非表示/違反報告)
あくあ - ほんと不器用すぎて切なすぎる。けど、それも赤さんっぽさが出てていい。あぁ〜映画化してほしい。笑 (2018年1月10日 23時) (レス) id: 4e4eb3dcc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年1月2日 17時
