そして、雪が降る【赤と青】２

水面下の非日常【Side青】 ページ22

12月に入ると、年末の歌番組やらなんやらの連続で、僕らは一層忙しくなっていた。


渋やんと顔を合わせずに済む期間なんてそうそう長く続くはずもなく、
最初会った時はうまく顔見れんかったけど、

…やましい気持ちでいっぱいやったけど…

すぐに当たり前に一緒に過ごす日々に戻っていた。


……やって、僕らには歴史…あんねんもん。



メンバーみんなとフツーに話しとると、「恋敵」なんてオーゲサな意識、現実味がなさすぎて、持ちつづけるほうが困難やん。



街はクリスマスの予感でキラッキラしてて、
それと反比例するようにみんなのストレスは溜まってく。


そりゃそやな。
僕かて いろんなもん、溜まりっぱなしや。


ほんでここにもまた、溜まってる男がひとり。
マルが大倉に話しかける。


「そーいや大倉、あれどーなったん？」

「ああ？」

「なんやっけ、メンバー内 ご無沙汰さんランキング」

「あー、横山くんが教えてくれへんから企画倒れになったわ。せっかくDVDの特典で発表しようと思っとったのに」


信ちゃんが「できるかぁ！」て律儀にツッコむから、こん人 職業病ちゃうかな、と少し笑ってもーた。


「あ、あと亮ちゃんにも聞いてへんわ」

「なんで？」

「絶対キレられるから怖いねんもん」


端っこでイヤホンで音楽聴いとる亮に、この会話は届いてへん。


みんな休みがなくてストレス溜まってるゆーても、相変わらず平和な、いつもの楽屋

……やと思っとったのに。



大倉がしれっと僕に、爆弾を落とす。



「まあでも上位二人は僕とすばるくんで決まりやろ、ねーっ すばるくん」


……こいつ、確信犯なんかな。



「…せやなぁ、おっちゃん昨日も張り切ってもーたから腰痛いわぁ…

今日踊れんから曲 バラードに変えてくれへんかなぁ」


僕がこっそり聞き耳立ててたら、それまで興味なさそーにしてた渋やんが、急なフリにも拘らず、しれっと返した。




……もちろん、冗談、なんやろうけど。

……昨日 結構遅くまで、みんなで、収録やったし。

……たとえほんまのことやったとしても…相手、グラスの女？ かもしれんし…。



そんなことでもやもやしとったら、大倉が横目で 僕をじっと見ていた。


…こっわ。

ほんまに、気づいてるんやろか。



平和、日常、いつもどーり。

でも、水面下では……


やっぱりちょっと、不穏やねん。

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