ずるい約束【赤】 ページ3
彼との関係が始まったのは、もう８年も前のことだった。
その頃の私は、バカで単純で、未来への不安なんて何もなくて、
…ただ美しい彼のそばにいられることが、無邪気にうれしかった。
人に話せない関係でも、
私以外に…それも複数…誰かがいても、
未来なんて1ミリも見えなくても、
「お前とおるのが一番楽やわ」という彼の言葉に密かな幸福感を抱いたり、
その細い腕に、骨の浮き出た背中に、綺麗な横顔に、手を伸ばせば触れることができるという喜びだけで、
自分が特別な存在になったようなーー…
幸せな、勘違いに浸ることができた。
あれからーー…
彼にもいろんなことがあって。
私にも、それなりに、いろんなことがあって。
数か月単位で疎遠になる時期もあれば、ふいに毎日のように会ったりすることもあったけれど、
…そして、今はもう、あの頃彼の周りにいた、華やかな女の子たちは、誰も残っていないけれど。
でもきっと、彼にとって私が純粋な意味で「特別」になることは一生ないんだなとーー…
つまりもう、そんな無邪気な夢を信じられる歳でも、なくなってしまったのだ。
一瞬抱いた願いも 潰えた今、改めてそう思う。
私は彼の引力に、逆らう術を持たなかった。
翼はもう、すっかり折れてしまった。
「ーー…っ」
意外と几帳面で、定期的にキチンと変えられる清潔なシーツ。
二人の体温が移り、生ぬるく乱れているベッドの上で、まだ冷ややかな気持ちよさが残っている部分を肌で探しながら、左腕を伸ばしてゆく
必然的に彼に背を向け、身体を離すことになったのに、
後ろから腕が追いかけてくる…
「明日8時起きやから、起こして…」
乱れた息を整えながらそれだけ言うと、私の背中に左半身を預けたまま、
あっという間に彼は眠りにつく。
ずるい。
「別れよう」も
「そばにいろ」も言わず、
「なんで？」と理由を問うことすらせずーー…
ただ口をふさぐように私を抱いて、
夜が明けないうちに黙って去ることすら許さない約束だけを言い残して、
私をまた、無力にする。
でも……どうしても拒めない。
抗えない。
そしてそんな私を、
彼はもちろん、見透かしていた。
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たまご(プロフ) - ぐさん» ぐさま、嬉しいお言葉ありがとうございます！なんとか第2幕も開幕しましたので、続きも楽しんで頂けるように頑張ります^ ^ (2018年1月3日 12時) (
レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - めちゃさん» めちゃさま、コメントありがとうございます！すばるくんのセリフ気に入って頂けるの、すごく嬉しいです…幽霊、いいですよね…w 引き続きよろしくお願いします^ ^ (2018年1月3日 12時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
ぐ(プロフ) - 初めまして。"既に投票済みです"となるのを分かっていても評価を押したくなるくらいこのお話が大好きです(*^◯^*)続きも楽しみにしています！ (2018年1月3日 1時) (レス) id: 378be249b3 (このIDを非表示/違反報告)
めちゃ(プロフ) - すばるくんのセリフの一言一言が全部好きです 私も幽霊になりたい (2018年1月2日 18時) (レス) id: 2487310cb4 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - なつきさん» なつき様、ごめんなさい！続編設定、今解除しました。続きは準備中なので、もう少々お待ちいただけるとうれしいです！ (2018年1月2日 17時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2017年12月22日 3時
