からめとる腕【赤】 ページ2
玄関に入る。
ずるずるとストッキングの脚を滑らせてリビングまで歩く。
その人がいる部屋の、ドアを開けるーー…
そこには…
立派なソファもあるのに、その下の床にちょこんと座り込み、何か作業に没入している…彼の姿があった。
上着も脱がず、部屋の入り口に立ったままで、私はぼうっとその姿を見る。
こちらには見向きもせずに、おそらく今週収録されるセッション曲の予習でもしているのだろう…
ノートPCを凝視して
口はゆるく開き、足元は無意識にリズムを刻む
…瞳孔が開ききったかのような、その瞳。
あの瞳が本当に輝くのは、彼が音楽に耽溺している、こんな瞬間だけーー…
「…うわ、びっくりしたあ…何しとんねん」
不意にこちらに気づいた彼にかけられた声で、
私は随分と長い間、そこに立ち尽くしていたことにようやく自分で気がつく。
「邪魔しちゃ悪いなって…それに、すぐ帰るから」
変わらず上着を着たまま、鞄さえ手に持ったままの私を見て、
彼は一瞬だだっ子を見るような顔で笑い、PCを脇へ寄せてソファへと腰をかけ直した。
「ええから、座れ」
「……座ったら、帰れなくなるから」
「帰るつもりなん？ なんで？ もう電車もないやろ」
「…言ったでしょ、もう…終わりにしたいって」
「んー？ 聞いてへんなあ」
痺れを切らした彼は近づき、小さく抵抗する私から首に巻かれたマフラーを取る。
上着を脱がせて、鞄と一緒にそれをダイニングの椅子にかける。
手を引いて、深い深い、柔らかく沈み込む、あのソファに座らせるーー…
「ーー…」
小さい彼の身体から、投げ出された、両脚の間。
ああ、ここに収まってしまったら、もうダメなのにーー…
私の胸の前で、ぎゅっと交差する腕
背中に感じる体温
着慣れたスウェットから漂う、彼の匂いに溺れて、息ができなくなる…
「そっかあ、最後かあ…」
「ほんまに？ 残念やなあ」
「お前がおらんと寂しいわあ」
冗談めかして、ひとり大袈裟に繰り返すその声は、どこか楽しげですらあって
ふっ、と息を吐いたあとーー…
「最後なら、精一杯激しくしたらな あかんなあ…」
耳元で囁きが聴こえたと同時に、顎を掴み振り向かされ、
唇が重なる。
それはーーー
また、終わりを見失ったゲームがはじまる、合図だった。
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たまご(プロフ) - ぐさん» ぐさま、嬉しいお言葉ありがとうございます！なんとか第2幕も開幕しましたので、続きも楽しんで頂けるように頑張ります^ ^ (2018年1月3日 12時) (
レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - めちゃさん» めちゃさま、コメントありがとうございます！すばるくんのセリフ気に入って頂けるの、すごく嬉しいです…幽霊、いいですよね…w 引き続きよろしくお願いします^ ^ (2018年1月3日 12時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
ぐ(プロフ) - 初めまして。"既に投票済みです"となるのを分かっていても評価を押したくなるくらいこのお話が大好きです(*^◯^*)続きも楽しみにしています！ (2018年1月3日 1時) (レス) id: 378be249b3 (このIDを非表示/違反報告)
めちゃ(プロフ) - すばるくんのセリフの一言一言が全部好きです 私も幽霊になりたい (2018年1月2日 18時) (レス) id: 2487310cb4 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - なつきさん» なつき様、ごめんなさい！続編設定、今解除しました。続きは準備中なので、もう少々お待ちいただけるとうれしいです！ (2018年1月2日 17時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2017年12月22日 3時
