鶏肉なしのオムライス２【黒】 ページ29
「…はは、気持ちええの？」
「ん…いい…」
「…もっとする？」
「ん…して…、あっーー…、」
俺は腰を打ちつけながら抱えた彼女の足にキスをする
俺を求めて無意識に伸ばした左手の指先にキスをする
…生まれたまんまの彼女のあらゆる場所にキスをする
「あぁっ…、」
「A、っ…」
A
何度俺はその名前を呼んだやろう
「Aーー…」
世界にひとりの、
俺だけの女の子ーー…
ーー…
「…はい、じゃあこの冷めた鶏肉なしのオムライスを美味しく食べてリポートしてください」
「なんなんもう…」
終わった後、Aは裸んまま起き上がり、そう言ってそそくさとテーブルの向こうに座った。
「いつかそういう仕事が来るかも知れないでしょ」
…さっきまで涙目で俺ん名前呼んで何回もイッとったくせに。
可愛かった彼女の残像を、俺は反芻しながら横たわっとったのに。
「もー…」
…俺はよろよろとベッドから起き上がり、やっぱり裸んまま、渋々と彼女の向かいにあぐらかいて座る。
「…はい！ なら今日はこの冷めた鶏肉なしのオムライスをいただきたいと思うんですけれども〜！」
「…２点だね」
「っさいわもう！」
そんなこと言うてげらげら笑って
俺たちはそれから、冷めた鶏肉なしのオムライスを向かい合って食べるーー…
TVをつける
…まだ“ブラウン管”やったんや
画面の中では往年のクリスマスソングを誰かがカバーしている
Aは食べながら、小さく一緒に口ずさんで
俺はその美しい響きに密かに耳を澄ませる
「…おいしいね」
「…うん」
Aが言う
…そんなことが幸せで
俺はなんだかしんみりとうなずく
「…好きだよ」
「…うん」
「…侯隆」
「ん…？」
「…一緒にいてくれてありがとう」
ーー…
…AはAで、必死で
これまでひとりで、生きてきたんやなと思う
慣れん土地、うまくいかない日々、信用できひん大人たちーー…
…俺たちには、互いしか、いなかった。
その日俺が彼女にあげたんは、出たばっかのシャネルの香水やった。
ビンゴ大会の景品、頼み込んで自分が当たったんと交換してもらって
適当な袋に入れて自分で買うたフリをして
彼女はきっとそれも、見透かしてたと思うけど。
…それ以来、何度その瓶が空になってもまた買い換えて
彼女からは、ずっと同じ香りがした
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ゆき姉(プロフ) - 年末年始と忙しくて気になっていたけど我慢してやっと、読めました！あここで名前が？って予想外だったので戸惑った笑ほんまのほんま、の感想は完結した時に。でもでもだけど。やっぱりたまごさんのかくeightが好きです。 (2021年1月7日 18時) (
レス) id: f0721a3442 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - はるさん» はるさん、コメントありがとうございます、とても嬉しいです。ちょうど「CHANCE」が出たころっぽかったのでそのイメージでしたが、マドモアゼルココもいいですね！引き続き見守っていただけると嬉しいです。 (2020年12月17日 3時) (レス) id: 0669d21b3c (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 鳥肉なし、愛がたっぷりのオムライスがリアルっぽくて切な愛おしいです。シャネルの香水はマドモアゼルココが大好きなので、それをイメージしました。 (2020年12月15日 11時) (レス) id: c38ac67a9b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - kukuさん» kukuさんコメントありがとうございます、嬉しいです！ほんと励まされます…！どうか引き続き楽しんでいただけますように！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぽてとさん» お返事ありがとうございました！ようやくご自身のお名前出てきたと思うので、どうか引き続きお楽しみいただけますように…！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2020年12月4日 16時
