民宿 まほろば

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名前を聞いたら吉村Aと名乗った彼女は。
やっぱり数社からサポート契約を受けているトップアマやった。



日本の大会は勿論、昨年から海外のローカル試合も出るようになって。
今回は１ヶ月の予定で、単身でハワイにステイしとって。

ハワイでも大会に出る事とか、
来シーズンに日本でプロテストを受ける事を教えてくれた。



ハワイ初心者の俺を色んなサーフスポットに案内してあげる、と、
どデカいアメ車のハンドルを男前に握るAの格好良さに。

俺が思わず怯むような波に、表情ひとつ変えずに挑んでいく度胸に。

最高の波を乗りこなした後に見せる、別人のような無邪気な笑顔に。



俺はどんどん夢中になっていった。




自分で言うのもなんやけど、相当モテる俺。
そーゆー飲み会では、ほぼ100パーお持ち帰りできる。
でも、なかなかシラフじゃ自分から口説けない。


勿論Aとは早朝から夕暮れまで一緒におっても波乗り三昧やから、酒なんて一緒に飲む事もなく。
やから、波乗り仲間以上に関係は進展するハズもなくて。



すっかりAと仲良くなった章ちゃんにも、

"ハンター亮がAちゃんの前では草食系や！"

なんてからかわれたりして。




でも、それでもええと思うくらい、ただ一緒におれるだけで刺激的な毎日やった。




あっという間に二週間がたって。
俺らが帰るまで、あと３日。



翌日にAの出る大会が迫った日。
昼間全然やったけど、夕方から波のサイズが上がってきたから、Aを誘って海に入った。




太陽が空をほんのりオレンジに染め始めて、海の青と空の境目がハッキリし始めた頃。


ボードに跨がって海に浮かんで、沖からくる良い波を待つ俺ら二人。



「しっかし、ホンマ男前やなぁ。普通ボディボーダーってボードの上に寝そべって波待ちするやろ。笑」


『寝てたら良いセット見逃しちゃうもん。』

『それとも、目のやり場に困る？笑』


「アホか！///」



そんな笑い話しながら、時々くる波にポワンポワンと持ち上げられる。



ｻﾞｻﾞｰﾝ
『うーん、中々来ないねぇ。次の亮に譲るからね。』


ｻﾞｻﾞｰﾝ
「いや、A練習せなアカンのやから、次のセット入ったら乗りなよ、俺ええから。」

『大丈夫っ。亮こそもう少しで帰るんだから、沢山乗っときな。』


『明日はこの辺全部大会になっちゃうからさぁ、こないだ教えたポイントの方に…』


「……、」




"もう少しで帰るんだから"



その言葉が突き刺さった。

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