2.百面相のオニーサン ページ4
貴方.side
自分の髪先や服の袖口から滴り落ちる雨粒の残骸達が、
灰色の地面に新たな道筋の様にして、俺達の足跡を作っていく。
先程迄、大量の雨が降り注ぐ空の下で足早に水溜まりを蹴散らしていたのに
今では落ち着いた足取りで、名も知らないお兄さんの角張った逞しい手に
自分の頼りない腕を掴まれて、その彼の家へと向かっていた。
「ねェ、どれくらいで着くの〜?
てか腕痛い」
「あともう少しだから大人しくしてろって」
俺に対する当たりも腕を掴む力も強いが、
既に我が儘を聞いて貰っているので、今これ以上の文句は言うまい
痛みを訴えれば素直に握る力が弱まり、安堵の溜め息を洩らす。
彼の家に着いて行く事に、最初は普通に拒否られたものの
自身の体を踏まれた件について言及し、
「踏まれた箇所が痛む」等と、わざとらしく一芝居を打ってみたら
嫌な顔をしながらも、意外にあっさり許諾された。
別に揶揄おうと意地悪で言った訳では無いが
少し悔しそうに眉根を中心に寄せる彼の表情といったら...。
思い出し笑いを堪えつつ、その時の彼の顔を鮮明に思い出す様に思索に耽っていると
突然、俺の腕を引っ張る前方の彼の動きと歩みが一気に止まる。
「んぅ゛ッ!?」
勿論、余所見をしていた俺の顔面と彼の背中が大激突だ。
奇跡的に軽傷、鼻だけの負傷で済んだが
「別に忠告くらい言ってくれたって」と少し不貞腐れて、
俺よりも背の高い彼を、下から思いっ切り睨み付ける。
そんな俺の控えめな反抗心を気にも留めず、彼は鞄の中を鍵を探す為に漁り始めた。
どうやら
お兄さんの肩から顔を覗かせると立派な玄関扉が俺を迎える。
数秒かけられて開いた扉を潜る彼の後を追い、家の中へと入ると
「とりま、このタオルで体しっかり拭いといて」
「...ん」
何処から出したかはわからないが、白く清潔なタオルケットを渡されて直ちに拭けと命じられた。
若干引きつつもタオルを受け取り、不服そうに身体を拭き始める。
体は完全に拭けたとしても、服を乾かさないと意味が無い
それに今も、ずぶ濡れた服の生地が肌にピッタリとくっ付いて気持ち悪い。
「そう言えばウチ、猫と犬飼ってるんだけど...」
「全然大丈夫、
少し軽口を叩いただけで、彼の冷ややかな目が此方を見詰める。
取り敢えずペット達がこの飼い主に似ていない事を祈りながら、リビングへと上がった。
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矢代(プロフ) - さらさらさん» 貴重な感想、有難う御座います! (2022年7月24日 20時) (レス) id: 47e380d88a (このIDを非表示/違反報告)
さらさら - と、尊いが過ぎる…!! (2022年7月24日 15時) (レス) @page32 id: 4475130a0e (このIDを非表示/違反報告)
矢代(プロフ) - ネコ日和。さん» ゑ、あ....い、生きてくだせえ!!(必死) (2022年7月11日 20時) (レス) id: 47e380d88a (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - ぶわああああああ‼ちゅ、ちゅーした‼??やばい、え、どう、あ……(困惑)悶え死ぬ運命しか見えん…笑 (2022年7月9日 21時) (レス) @page29 id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
矢代(プロフ) - ネコ日和。さん» 反則級にイチャつかせました(笑) 大丈夫、ショタ好きは共通性癖です😌👍。ラフの状態ではもっと距離近いかも...、作者の私でも「もっとやったれ!!」ってなってるから多分皆そうだと思う(妄想)。 (2022年7月3日 20時) (レス) id: 47e380d88a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:矢代 | 作成日時:2022年6月5日 15時