俺を拾った人は、どうやら配信者らしい【桃】

26.褒め言葉で一発KO ページ28

貴方.side



ブリーチのし過ぎで少し癖の着いた髪をひと撫でし、次いでに両手で血色が悪く蒼白い頬を優しく掴んで持ち上げ
拒否られてはいないものの無理矢理お互いの目線を通わせようと彼の優れた容貌、天の悪戯なのか何故か謎にとても整った顔を覗き込む。



「膝が爆笑してでも俺はこの体勢止めないから

　本日限りだかんね、
　何時もやる気の無いこの俺の『Aお兄さん』は」

「そこについては殆ど諦めてるわ、言い方を変えろつってんの」



死にかけ状態にも関わらず、普段通り俺の額に強烈なデコピンをかましたさっくん
不服そうにそう言いつつも、彼の瞳はほぼほぼ閉じ掛けている様な気がした。



「本当に、お前ってさ何時まで経っても馬鹿...」



膝上で項垂れる彼の表情は、先程から一気に窶れている気もするが
段々と穏やかな顔にも変わっている気がしなくもない。

そんな和やかな情景を瞼と瞳の裏側に焼き付けた後
俺の気持ちを沢山掌に込め、元々セットされていたが今は見る影もないグシャグシャの髪を更にワシャワシャと崩す様に撫でてやる。



「偉いねさっくんは、ホントに凄い

　俺だって感謝してもし切れない程の恩を君から受け取ってるし
　毎日毎日、介護みたいな世話だってして貰ってる

　だから言っちゃえばコレは一時的な恩返しみたいなモン
　君の思うが儘に、いっぱい甘えて良いんだよ」



自身の奥にある真意を隠して顔面にわざとらしい笑顔を貼り付け、再び丁寧に頭を撫で回した。
水辺が荒々しく波打つ水面下に埋もれさせた素直な気持ちを、今更自分自身に掘り起こされた様な気分だ。

でもその数秒後、俺の澄ました表情と尊厳は大きく傾く。





.






「そんな言うんなら俺の好きな所、全部言って」

「ぁ、は...へぁ」



唐突過ぎるかつ何とも恥ずかしい思いしかしないであろう、まさかの提案を強要される事となって思わず妙な声が漏れてしまった。

だが何でも言う事を聞くと大見得を切った手前、断るなんて出来そうもないし
むしろコレをチャンスにすれば良いんじゃないかとか、そんな阿呆みたいな言葉が脳内の思考を駆け巡った。



「あの、あのね...ちょっと数個くらいに纏めるね」



覚悟を決めあぐねている状況でも、焦った心は口走って変な事を言い掛けてしまいそうになる。

大丈夫、唯褒めまくればきっと彼も満足する筈
彼の発言に他意は無いと思うし、俺の拙く幼稚な脳ではその発想に辿り着かないけれども多分普通に甘えてるだけだ。

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