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60話 ページ21

キラキラ光る石があしらわれた小さい宝箱。青い色に、赤、オレンジ、ピンク、緑。

シャンデリアの光に反射して、とても綺麗だった。
触ってみたいと思ったけど、手が届かない。精一杯背伸びをしても、掌ひとつ分足りなくて時折飛び跳ねてもみた。


「A、何してるの?」


大好きな声に呼ばれて、勢いよく振り向く。
お母様は優しい笑顔を浮かべて、コツコツとヒールの音を鳴らせながらドアから入ってきた。
ここはお母様の部屋で、僕はたまに地下街からここに連れて来られる。

僕はこの時間が、大好きだ。


「お母様、僕、あれが触りたいです」

「これ?」

「はい」


お母様は、僕の隣まで来ると棚の上にあるあの綺麗な箱を両手で持ち上げる。
ふわふわ、つやつやしたお母様のドレスからはいつも花の香りがした。


「A、こっちにいらっしゃい、近くで見せてあげるわ」

「はい」


真っ白なシーツが皺なく伸ばされたベッドにお母様は座り、僕もその隣に座る。
すると彼女は「おひざにおいで」と、優しく囁いて、僕は待ってましたと言わんばかりにお母様の膝の上に座り直した。

先程のキラキラとした箱を、お母様は僕の膝に乗せる。


きらきら。きらきら。

いろんな色の宝石が美しくて、目が離せなかった。


「これはね、オルゴール」

「…おるごーる」


初めて聞く言葉に、なんだろうと首を傾げる。
箱に手を添えているお母様の指には、たくさんの指輪があり、箱と同じようにきらきらしていた。


「A、この蓋を開けてごらんなさい」


やっと触れる。
僕はドキドキしながらその箱についている宝石を触った。
冷たくて、硬くて、不思議な気分になる。
はあ、綺麗、なんてきれいなんだ。

そしてゆっくりと蓋を開けてみた。

すると、高く心地よい音が鳴り始める。
なんの曲かは分からないけど、とても軽やかで、明るいメロディだった。

これが、オルゴール。


「気に入った?」

「とっても」

「よかった」


僕は嬉しくて、何度も開けたり閉めたりする。その度に音楽が鳴り、夢の中にいる気分だった。

ふと、頭に手が乗り、髪の毛を梳く様に撫でられる。お母様の手は小さく、優しい。


「いい子ね、天使のようなあなたが大好きよ」


僕も、僕もお母様の事が大好きだよ。


本当に


本当に



大好きなんだ




母さん




どこにも行かないで。

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やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます、絵を褒めてもらえるのは嬉しいです!! かっこいいと言われて主人公くんも喜んでるはず!笑 (2018年7月10日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Soleil(プロフ) - イラスト拝見させて頂いたのですが、めっちゃかっこいいですね!絵がとてもお上手ですね (2018年7月10日 14時) (レス) id: bc0cb92646 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Rainさん» 嬉しいお言葉たくさんありがとうございます〜!マイペースに頑張っていくので宜しくお願いします!! (2018年7月2日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごく面白いです!!これからも頑張って下さい!応援してまーす!更新楽しみにしてます! (2018年7月1日 22時) (レス) id: e08e47c2f9 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます。コツコツ書いていくので今後とも宜しくお願いします(^O^) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:やし野 | 作成日時:2018年3月31日 23時

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