59話 ページ19
「あの時に手を取りお前の存在を知らなかったら、またお前に会いに行こうともしなかった。今もお前達3人が来ても俺はその場から離れていくだけだ」
些細な出来事が、大きく自分を変えた。
兵長の言葉に俺もだと、俺もそう思っていると。
たまに、錯覚してしまいそうになる。
兵長が僕の事を好きなんじゃないかと。
でも、それを素直に認められない自分がいる。だって、彼に好きだと言われたことなんてない。
好かれてる、そう思う時はある。けれどそれは俗に言う『愛』なのかは分からない。
あの人は誰かの人肌を求めてるのだろうか
唇を寄せられる存在が欲しいのだろうか
女性じゃないからこそ手を出してくるのではないだろうか
一時的なものしか求めない空の感情をもらってるだけなんじゃないか
そんなことが頭をよぎったところで、酷い自己嫌悪に襲われる。
なんでこんな事を考えてしまうんだ、こうやって今過ごしてる時間だけでも尊い事なのに。
でも、確実にこの関係は終わりを迎える。
次の壁外調査で生きるにせよ、死ぬにせよ、兵長との時間は無くなる。
彼らの計画が終われば、僕はここの駐屯兵として生きていく。そして、リヴァイ兵長は調査兵として生きていく。
2人の接点がなくなるんだ。
気軽に会いに行ける距離でもない。
ああ、嫌だな
終わって欲しくない
やり場のない感情が胸あたりで蠢いている。なんだか、気持ち悪い。
急に、怠さを感じた。
体が重い、頭が痛い。
「A?」
兵長に名前を呼ばれるけれど、返事ができない。声を出すのが、億劫で、息をするのが大変で。
「どうした」
凭れさせていた背を起こし、手を伸ばして僕の腕を掴むと上に引き上げられる。
そうか、今僕はまともに立っていられてない。足に力が入らない。
自分の体がどうなってるのか分からない。
頭をなにかで殴られているような、激しく揺さぶられているような、不快な感覚に呻き声が出る。
ついには崩れる様に地面に膝をついた。
遠くからリチェとロイドの声が聞こえる、視線を向けるとこちらに走ってくるところだった。
心配して駆け寄ってきてくれてるのかな。
「おい、しっかりしろ!」
すぐ近くに居るはずなのに、兵長の声はやけに遠くから聞こえた。
ふと、体に襲ってきていた痛みや、気だるさ、気持ち悪さが一気になくなる。
あれ、楽になった。
楽になった、けど。
視界が周りから暗くなっていく。
途端に、意識が闇の中に落ちてしまった。
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やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます、絵を褒めてもらえるのは嬉しいです!! かっこいいと言われて主人公くんも喜んでるはず!笑 (2018年7月10日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Soleil(プロフ) - イラスト拝見させて頂いたのですが、めっちゃかっこいいですね!絵がとてもお上手ですね (2018年7月10日 14時) (レス) id: bc0cb92646 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Rainさん» 嬉しいお言葉たくさんありがとうございます〜!マイペースに頑張っていくので宜しくお願いします!! (2018年7月2日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごく面白いです!!これからも頑張って下さい!応援してまーす!更新楽しみにしてます! (2018年7月1日 22時) (レス) id: e08e47c2f9 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます。コツコツ書いていくので今後とも宜しくお願いします(^O^) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やし野 | 作成日時:2018年3月31日 23時