152.約束 ページ20
ひとしきり泣いて、やっと落ち着く。
ずっと私の背中を撫でていてくれた雅紀が、私の濡れた頬を手のひらで拭って、微笑んだ。
彼の瞳は、やっぱりあの頃と同じで、キラキラと輝く。
「あの約束、覚えてる？」
「…うん」
「あれから、Aが突然いなくなって、俺、すっげー後悔したの」
私は、黙って頷く。
「俺がパティシエを目指したのだって、Aのせいなんだからね」
「…そうなの？」
「俺が初めて作ったサブレを、Aが美味しいって言ってくれたから」
そうだった。
だからあのサブレを食べた時、あんな気持ちになったんだ。
謎はあっさりと解けて、胸につかえていたものがスルリと無くなった気がした。
少し照れ臭そうなまあくんの笑顔を、思い出す。
「ずっと、Aを探してたんだ。
いつかきっと、また会えるって信じて」
「うん…」
「そしたら、本当に会えて」
私が泥酔した、あの日だ。
「最初は、わかんなかったよ。
俺もあの時、コンクールに落選してモヤモヤしてて、思わずお持ち帰りした女の子が、Aだった」
「お持ち帰り…」
フフ、って彼が笑う。
「名前聞いて、まさかって思ったけど、俺のこと知らないって言うし」
「…」
「でも、この痕を見て、確信した」
私の胸元を、そっと撫でる。
「この子は、どんな人生を送って来たんだろうって、居ても立ってもいられなくなってさ」
「…うん」
「忘れられてたのもショックだったし」
「…ごめん」
「でも、また俺の所に来てくれた」
「…」
「今度こそ、絶対離すもんかって思ったんだ」
「雅紀…」
「何度離れたって、俺はAを見付けるよ。
どんなことがあっても。
いつも…Aのことを想ってる」
彼はそう言って、私にキスをした。
あの頃、幼すぎて人生の波に逆らえなかった私達は、再び出会って、激しく恋に落ちた。
小さかったまあくんは、大人の男になっていて、
いつの間にか私の心をいっぱいにしていた。
こんな運命的なことって、あるんだろうか。
私達は何度離れたとしても、赤い糸に導かれるように、彼は私を見付けてくれる。
震える手を、彼が握る。
「あいしてる」って、耳元で優しく囁く。
彼の手の温かさはあの頃と変わらなくて、愛しさが込み上げた。
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smaplove(プロフ) - 読みました。happyなお話を読んでhappyの気持ちに為りました。小さい頃に二人は、出逢って一度離れ離れになったけどまた再会して色々な壁を乗り越えて幸せに為って良かったです。二人のloveloveの所を読むとドキドキとキュンキュンが止まりませんでした。(=^ェ^=) (2019年10月12日 14時) (
レス) id: f43da4dd9f (このIDを非表示/違反報告)
kami(プロフ) - yukoさんはじめまして。このお話しと社長のお話しは定期的に読み返したくなる大好きな作品です。素敵な作品をいつもありがとうございます。これからも応援しています！櫻井先生も更新楽しみにしています♪ (2018年4月17日 18時) (レス) id: 73b83dca63 (このIDを非表示/違反報告)
yuko(プロフ) - mokaさん» mokaちゃん、感想ありがとう♪甘い記憶の店長も天使さんも確かにキラキラしてるね（笑）でも実はドス黒い雅紀くんも好きですｗ最後まで読んでくれてありがとう、嬉しいです☆ (2017年1月10日 23時) (レス) id: 7b49a3b518 (このIDを非表示/違反報告)
moka(プロフ) - yukoさんの書く相葉くんはほんとに素敵で、前も言ったけどほんとにキラキラしてます！笑 メンバーの書き方も好きだし、担当じゃない長編も一気読みしてしまう、、 素敵なお話ありがとうございました。 (2017年1月7日 1時) (レス) id: 9b3456ddd8 (このIDを非表示/違反報告)
yuko(プロフ) - さやかさん» さやかさん、感想ありがとうございます♪４章に渡るお話を全部読んで頂いてありがとうございます！面白いとか感動とか幸せとか嬉しいことばかり書いて頂いて、私も幸せです(*^_^*) (2016年8月21日 0時) (レス) id: 7b49a3b518 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yuko
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=yashikonbu
作成日時：2016年2月6日 1時
