悩みと優遇｜鉄哲徹鐵 ページ26
｢な、何してんだこんなところで！？｣
｢うぇ、て、鉄哲……｣
｢わ！！待て！泣くな！｣
｢泣いてないし！｣
嘘。泣いてる。
校舎の裏、人通りの少ない穴場。
私はいつもここで、辛いことがあれば1人で収集をつかせるのだ。
フェンスの上に、体育座りになってため息をつく。
誰も来ないから、思い切り泣ける。
思いっ切り叫ぶことが出来る。
筈だったのに。
｢…なんで、鉄哲がここに｣
｢お前がなかなか教室帰ってこねーから探して来いって。何かあったのか？｣
｢別に｣
理由は、ただ単純なことだった。
ヒーローに、向いていない、と言われた。
それは他の学科の人間の軽率な言葉だったけれど、自分には大きすぎた。
それを間に受けてしまっている自分は本当にダメだと思うし、けれどもどこかで納得してしまっている自分がいて。
｢………少し、忘れようとしてただけ。｣
彼に顔を見せないように、膝に顔を埋めた。
早くどこかに行ってくれないだろうか。
クラスメートに無様な泣き顔なんて見せられない。
"ヒーロー"には、見て欲しくない。
｢…あー、なんかよくわかんねえけど｣
こっちに軽く近寄る足音が聞こえる。
｢辛いことがあんなら俺に言ってみろ！｣
聞こえた、と思ったら、頭をわしゃっと撫でられた。
その不器用にも優しい行動に、私の涙腺はまた、緩む。
…ヒーローらしくて、優しいとか、カンペキだね、君は。
心の中で呟いたはずの言葉なのに、思わずまた身にしみた。
｢おっ、おい！？また泣いてね！？｣
｢っもう、最初から泣いてないってば、｣
彼の優しさに、さっきの不安が全部溶けていくようで、安心でまた涙が零れた。
そっと隣にいてくれる暖かさもまた、彼の持ち前の優しさで。
｢…ありがとね、鉄哲、｣
多分泣きまくった顔は不細工だろうけど、それでも顔を上げて目を合わせて、小さくお礼を言いたかった。
｢！…それはどうも。やっぱ泣いてんだろ、目え腫れてんぞ、｣
目を優しくなぞって、涙を拭ってくれる。
弱みを知っても寄り添ってくれる彼こそが、やっぱり私には素敵な『ヒーロー』に見えた。
｢…悩み、聞いてくれる？｣
｢おうよ！｣
『彼女の悩みを知るのは、俺だけでありたい。』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 418人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
タナタ(プロフ) - 文章の書き方がとても素敵です！良ければ、ホークス書いて欲しいです！これからよ応援しています！ (2月25日 22時) (
レス) id: 4118c67c05 (このIDを非表示/違反報告)
Syara(プロフ) - 滅茶苦茶面白かったです…!!荼毘くんが最推しなのですが他のキャラクター達も読んでみたところ魅力がたくさん…推しが増えてしまいそうです… (2023年2月2日 22時) (レス) id: ebcd0fa8e6 (このIDを非表示/違反報告)
累 - 鉄哲君の物語の甘酸っぱさに1人悶えておりました！とても良い物語ありがとうございました！ (2021年8月16日 9時) (レス) id: 1eb84dbd89 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 短編もステキです(*´ω｀*)かっちゃん姉弟夢…切ないけどツボです！幸せになってほしい(切実) (2019年2月21日 4時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
アネモネ - 面白いです!リクエストなのですが、飯田君とオールマイトをお願いします! (2018年8月28日 18時) (レス) id: 23dcbd0823 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：八尋 | 作成日時：2017年5月27日 17時
