Episode16 自惚 ページ18
『めっちゃ美味しい!』
パンをスープに浸しながら笑顔でTordに感想を伝えると、彼は「そうか」と一言呟きどこか嬉しそうな様子で微笑んだ。そんなことをしながら2人で和気藹々と食事を楽しんでいる最中、私はふとソファー付近の机の上に置いてあるPCへ目をとめた。
『そういやPCの設定上手くいった?』
「ん?ああ、WiFiの設定とか諸々終わったし開けばすぐ使えるぜ」
スープを啜り、スプーン片手にTordは得意げに口角を上げる。元々機械関係は詳しいのだから別にその辺の心配は必要無いのだろう。
「それにPCさえあれば色々出来るからな。この世界の情報収集も可能だし金だって稼げる。便利なもんだ」
『別にお金関係は気にしなくてもいいんだけど…』
「いつまでもAに依存してらんねぇし、自分で自分の生活費くらいは稼げるようになりたいしな」
…それもそうか。私だって居候の立場だったら金銭面でずっと援助されたら気まづくて仕方がない。Tordがそう思っているのかは不明だが、もしかしたら何か思うところがあるのかもしれない。
Tordなら金銭を稼ぐくらい今すぐにでも出来る芸当だろう。そうなればこの同居生活も終わってしまうかもしれないな……なーんて。
『…もしある程度稼げるようになったらやっぱ自分で住む場所探したりするの?』
「そうだな…それもいいかもな」
パンを口の中へ放り込みながらあっけらかんとTordは答える。その返事に、私は少しだけ寂しさを覚えた。引き止める権利が私に無いのは承知の上だが、やはり推しと生活出来なくなってしまうのは嫌だなと考えてしまう。
すると、パンを食べ終わったTordが、おもむろにまた口を開いた。
「ま、今んとこここから離れる気はさらさら無ぇよ。軍のヤツらがいつ迎えに来るのかも分かんねぇし。それに___」
『それに?』
「___あー………何言おうとしたか忘れた」
若干目を逸らしながら少し口篭りながらそう言ったTord。見るからに何か言いたげだった怪しさ全開の彼だが、それよりも私はTordがこの家を出ていくつもりがない事に酷く安堵していた。
__しばらくして食事を全て平らげた後、私はシャワーを浴びに行くTordの背中を見送りながら先程の言葉の真意について考え込んでいた。
『…なんだったんだろう』
結局Tordの口から伝えられる事のなかったあの言葉。ここを離れたくない…迎え以外の理由………うーん…
『なんか自惚れた事ばっか思いついちゃうなぁ…どーしたもんか』
誰もいないリビングの一角で、私は小さくボヤいた。
72人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!!Tordと夢主の相性が抜群ですね!!!(?)無理せず更新頑張ってください! (2023年1月25日 8時) (レス) id: 7db4a09c58 (このIDを非表示/違反報告)
大祝 - お久しぶりですー!この作品大好きだったので更新嬉しいです! (2022年10月28日 17時) (レス) id: e74f7c17fb (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - いつも楽しみに待っていました!これからの展開を楽しみにしています! (2022年10月28日 17時) (レス) @page29 id: e11f93c1d4 (このIDを非表示/違反報告)
omio(プロフ) - 更新待ってました!来る日も来る日もチェックさせて頂いていましたが本当に嬉しすぎてやばいです!!次の更新も心待ちにしてます! (2022年10月27日 18時) (レス) id: 0610d9afb5 (このIDを非表示/違反報告)
ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!相変わらずの豊富な語彙力羨ましいです…!無理せず更新頑張ってください!! (2022年10月27日 8時) (レス) id: 05631b7c6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はちまき | 作成日時:2022年7月10日 21時