Episode17 運搬 ページ19
『おぉ……』
玄関にでかでかと鎮座しているソレを見て、私は思わず感嘆した。お昼をまわったくらいに届いたベッドを配達員の人と協力して室内に運び終わり、今は呼吸を整えながら目的のブツを眺めている。
『やっぱ重いなぁ…Tordがいなかったらどうなってたか』
「息が荒いところ悪いがまだ終わってねーぞA」
私と違い全く息が弾んでいないTord。そんな彼に少し驚きつつも、そういえば軍人だった事を思い出し1人で勝手に納得した。
私は重い腰を上げ、改めてベッドへ向き直る。目的の部屋まで数m。もう少しの辛抱だ。
Tordの目配せを合図に私は彼とは反対方向へ回り込むと、ベッドの下部分へ手を掛けた。
「…せー」
『のっ!』
掛け声を合図にベッドが持ち上がる。今回は配達員の人が居ないので、先程よりも遥かにベッドの重みが身体へ伝わった。
元々筋力が乏しい事も相まってか、少し持ち上げただけで額から汗が滲む。ふとチラリとTordの様子を伺うと、彼は彼でさっきよりも辛そうな表情を浮かべていた。
「…ぐっ」
『は、早く…部屋に…ぃ!』
この軋む音はベッドからなのか自分の腕からなのか。どちらにせよ限界が近付いているのは確かだった為、私達はよろよろとベッドを部屋へ置きに行った。
ドン、とベッドを床に下ろす。
1回目よりも荒い呼吸に苛まれながらも、私はなんとか体勢を整える。
しばらくして落ち着いてから改めてベッドを見ると、なかなか良い素材をした代物だと気が付いた。まあTordが来た事にはっちゃけて高めのベッドを注文したのは私なのだが。
「へぇ、中々いいベッドだな。これAのヤツより高いベッドだろ?」
な、何故それを……
ベッドの生地やセットになっている毛布を触りながらTordがそう私へ言った。恐る恐る質問すると「1回部屋入った時に見た事あるし」だそう。1回見ただけで分かるとかどんだけお目が高いんだ。
『そうだなぁ…1回でいいから寝てみたいって考えるくらいには良いベッドだと思うよ。奮発したし』
「ふーん…」
私がベッドをぽふぽふと触りながら少し口先を尖らせる。思春期の子供のような様子を見せる私を、Tordは目をスっと細めながら見つめていた。
……何故だろう。とてつもなく嫌な予感がする。
上半身をベッドに沈める私へTordはゆったりと近付くと、私の肩に優しく手のひらをポンと乗せた。
「じゃあ寝てみる?」
『…えっ、いいの?』
嫌な予感は外れたようだ。
購入者の私が許可を貰うのも変な話だが、人目もはばからず私は大袈裟に喜ぶ。
72人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!!Tordと夢主の相性が抜群ですね!!!(?)無理せず更新頑張ってください! (2023年1月25日 8時) (レス) id: 7db4a09c58 (このIDを非表示/違反報告)
大祝 - お久しぶりですー!この作品大好きだったので更新嬉しいです! (2022年10月28日 17時) (レス) id: e74f7c17fb (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - いつも楽しみに待っていました!これからの展開を楽しみにしています! (2022年10月28日 17時) (レス) @page29 id: e11f93c1d4 (このIDを非表示/違反報告)
omio(プロフ) - 更新待ってました!来る日も来る日もチェックさせて頂いていましたが本当に嬉しすぎてやばいです!!次の更新も心待ちにしてます! (2022年10月27日 18時) (レス) id: 0610d9afb5 (このIDを非表示/違反報告)
ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!相変わらずの豊富な語彙力羨ましいです…!無理せず更新頑張ってください!! (2022年10月27日 8時) (レス) id: 05631b7c6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はちまき | 作成日時:2022年7月10日 21時