28話 ページ28
今朝よりも荷物の増えたリュックサックを背負うAは、制服の両ポケットに入った菓子を落とさないように気をつけて通学路を歩いていた。
相澤の自宅は雄英高校から徒歩数十分の場所に建設されたアパートの一室。二人が共に過ごし始めたのは一年ほど前。
身寄りのなくなったAを保護という形で引き取ったのが相澤だった。
数多く活躍するヒーロー。その中でも強くて優しくて格好良いヒーロー。
相澤は命の恩人であり、Aの憧れでもあった。
草木が並ぶ住宅の角を右に曲がると現自宅であるアパートが目に入る。
Aはリュックサックから携帯を取り出して現在の時刻を確認した。画面に映るデジタル時計は正午過ぎを知らせている。
校舎を出た直後に「夕方帰る」と相澤から連絡が入っていた。
それまで時間を潰すには、と足元に視線を落とす。
そこにはすりすりと顔を擦り付けている黒猫がいた。
ゴロゴロと喉を鳴らす様子はAの帰宅を喜んでいるようにも見える。
「ただいま。今日は出迎えてくれたんだね」
頭を撫でると、黒猫はそうだと返事をするように鳴いた。
この黒猫は相澤と同じく一年近くの付き合いになる。
話に相槌を打つこともあれば、うんうんと頷く、人間味のある不思議な猫だった。
鰹節を求めて何度か部屋に入り込もうとして、相澤に見つかると首根っこを掴まれていとも簡単に追い出された出来事はつい先日のことだ。
着替えや荷物の片付けを済ますと、Aは上着を手に持って黒猫の元に戻った。
遊んでいる内に真上で眩しく照らしていた太陽は段々と西の方角に沈み、足下や建物の影が伸びていた。通る風は少しばかり肌寒く感じる。
冷えてしまう、と上着に腕を通すと同時にポケットが振動した。
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やおや(プロフ) - きゃーぽんさん» ご感想、応援をありがとうございます。お楽しみ頂けるお話をお届けできるよう努めますので、今後もどうぞよろしくお願いします…！ (2021年4月20日 0時) (
レス) id: 889f105f89 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - めっちゃ面白いです！頑張ってください！ (2021年4月5日 16時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やおや | 作成日時：2021年1月29日 2時
