14話 ページ14
暫くして、緑谷に順番が回った。
相澤から投げ渡された球をあたふたしながら受け取った緑谷は、真っ青な顔色で白円の中心に向かっていく。
彼はこのテストが始まってから常に自信のない表情を浮かべて、個性を使用している様子もなかった。
各種目で気を引くほどの大きな記録も出さずに、まるで中学時代と同じく個性を禁止された体力テストのように普通にこなしていた。
「緑谷くんはこのままだとマズいぞ……？」
「ったりめーだ。無個性のザコだぞ」
現種目を測り終えた飯田たちは心配そうに緑谷を見守る。
そんな中、腹立たしく言い放った爆豪の言葉は周囲の意識を引きつけるには十分すぎた。
すかさず入試時の出来事を説明する飯田の声が響く。
緑谷が無個性である真実か否かも不確かな情報。たった三文字の一言は余りにも衝撃的で。
飯田の声がAの耳に届くことはなかった。
「……無個性？」
誰もが生まれつき何かしらの超常能力である"個性"を持つ中、一切の力を持たない人間はこの世代ではひどく珍しい。
そして、何かしらの事情があって個性を隠して生活する者も少なからずいる。
その際に無個性だの没個性だの、様々な暴言を吐かれてしまうことをAは知っていた。
力任せに投げようと構える緑谷に哀れみや期待を含んだ視線が集まる。
放った球は爆風を巻いて飛ぶことも、重力に反して浮くこともなかった。
ごく普通な弧を描いて地面に吸い込まれていく。
「46m」
無機質な声が記録を伝える。
緑谷は両手を見つめて狼狽えていた。
期待は叶わず、これまでと変わらない普通の結果。
「な……今、確かに使おうって」
「個性を消した。つくづくあの入試は……合理性に欠くよ。お前のような奴も入学出来てしまう」
呆れた声で話す相澤の目は赤く光り、長い髪が逆立っている。
後ろ姿だけでも分かる、個性発動の姿。
Aは無意識に体を強張らせていた。
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やおや(プロフ) - きゃーぽんさん» ご感想、応援をありがとうございます。お楽しみ頂けるお話をお届けできるよう努めますので、今後もどうぞよろしくお願いします…！ (2021年4月20日 0時) (
レス) id: 889f105f89 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - めっちゃ面白いです！頑張ってください！ (2021年4月5日 16時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やおや | 作成日時：2021年1月29日 2時
