13話 ページ13
二人の意図せずに醸し出た親密な雰囲気は他の者にも届いてしまい、視線がチクチクと背中に刺さる感覚がした。
待機場所の様子を一瞥したAは少し眉を顰めると、足を半歩前に進めて顔を見上げる。
「……消太さんって人の心も読めるんだね」
「っ、おい、名前で――」
普段と変わらない口調に相澤が一瞬の隙を見せた。
その隙を見逃さずに、相澤の手に収まったままの球に触れる。
間接的に触れたことでAの個性は発動条件を満たした。
相澤の手の力が"停止"し、掴む力が抜けて球が滑り落ちる。
他の生徒に気付かれる前にすかさず拾うと、早足で地面に引かれた白円に入っていく。
「投げまーす」
相澤に一瞬の目線を送った後、得意な"念力"の力を使って空に向けて投げた。
球は静かに空を泳ぎ、次第に目視で確認できなくなると計測器に900メートル台の記録が表示される。
麗日の無限記録は越せなかったが、他の生徒の記録よりも大きな差をつけることはできた。
「千歳」
「非合理的だなぁと思ったので、つい。でも――」
ちゃんと本気で投げたよ、と歓声にかき消されながらAは答えた。
相澤は物言いたげな顔をしたが、今伝えることではないなと考え、急かすように次の生徒に球を投げ渡した。
「おー！ お疲れ！」
「驚いたわ、千歳って何でもできちまうのな」
「何でもはできないけど……ありがとう。切島くん、瀬呂くん」
待機場所に戻ったAを二人が温かく出迎えた。
切島は拳を握りしめて称賛を。瀬呂は「おつかれさんー」とおそるおそる挙げられた手とハイタッチを交わす。
その際に気づいた違和感。
Aの右手は指先が自由に動かなくなっていた。
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やおや(プロフ) - きゃーぽんさん» ご感想、応援をありがとうございます。お楽しみ頂けるお話をお届けできるよう努めますので、今後もどうぞよろしくお願いします…！ (2021年4月20日 0時) (
レス) id: 889f105f89 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - めっちゃ面白いです！頑張ってください！ (2021年4月5日 16時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やおや | 作成日時：2021年1月29日 2時
