あつしside （例外） ページ8
仕事が終わったのは明け方だった。あまりにも予想不可能なことが多くて、確証を持って現場へ向かうには時間がかかりすぎた。そもそも予測不可能なキャラクターが狭いセカイの中に12人もいて、それを数人だけで管理する方があんまりだ。しかも、(新)むつごもまた意思がここまで強いとは思ってもいなかったし、その意思によって【シナリオ】の邪魔をする存在になるとは...。
ぼーっとした頭で考えながらお披露目会へ向かう途中、ボクはこのセカイで初めての〈例外〉を見ることになった。
「このセカイに生まれてきたんだったらまず、主役キャラのこの「僕」には礼儀正しく挨拶するのが基本でしょ、」
道端に居るはずのない、(新)チョロ松。そして、落ちるはずのない２つのゴミ袋。少しだけ見える、校章入りの靴。校章入りの運動靴を履いた高校生キャラはこのセカイに居ないはずだし、生まれるはずもない。少なくともそんな予定は社長から聞いていない。
ということは。
＿明らかにこのセカイでは起きないはずの出来事が起きている。
「あー...もういいや。理解できない戦力外(ゴミ)なら【向こう】で閉じこもってて」
遠方に見えるブラックホール。おかしい。(新)むつごにセカイ同士をつなげる力は無いはずなのに。これじゃボクの仕事が更に増えるじゃないか。
...いや違う。これは仕事じゃなくてチャンスだ。
もしかすると全てが変わるのかもしれない。
何も現時点ではまだ何も分からない。でも、これだけは言える。昨日まで用意されていた【シナリオ】が変わった。(新)むつごの【おそ松さん】ではなくなる。
僕は嬉しくて、笑顔が抑えられない。
「だから君は【主役】になれないんだよ、新チョロ松くん、」
振り向いた(新)チョロ松は不機嫌そう。そうだよね。
初めてこのセカイの自由を満喫しようとしていたところだったんだから。
新チョロ松「あ？なんでこんなところに、」
「なんで、も何もないハズだけど...」
嗚呼。このセカイが。ありえない〈例外〉によって。変えられる＿
「この世界に来たばかりの方を悪く扱うと、後々バチが当たるって知らないかなあ」
目の前のゴミ袋がバサリ、と落ちた。目の前にはやはり見たことも聞いたこともない高校生がいる。きっとこの子はとんでもないことに関わる。
そして、このセカイにいる全てのキャラクターがこの子を求め始める。
可愛そうにねえ。ああ、そうだ。こうしよう、僕が守ってあげるよ。
楽しみだね、A？
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作者名：みーやん。 | 作成日時：2022年5月17日 22時
