意味がわかるとヤンデレな日常【名前変換/短編集】

5,　にちようび/幼馴染 ページ9

日曜日は大好きだ。学校が休みだから、なんでも好きなようにできるし。家でのんびり過ごして、ネットの小説を読むのなんて最高だけれど、今日は欲しいCDの発売日だったので外に出た。

「えーと……新着、新着、あった！」

新発売の棚に、可愛らしいポップ体の字で発売が呼び掛けられていた。一大ジャンルのものなだけあって、かなり大々的に売られていた。

(……ここまで大々的、だと)

　レジの列も大々的だった。ひい、ふう、みい、いいや数えるだけ無駄だ。

　人生は選択肢に溢れている、と言うけれど。すぐに並ぶべきか、それとも他のコーナーも見てくるか。チラッと覗く程度には見ていくか、と歩き出した時。

「あれ、A〜！ 偶然だね」

　驚いた、外出先で幼馴染に会うなんて中々ないことなのに！ 私は彼に手を振って駆け寄った。

「珍しいね。普段、あんまり音楽聞かないでしょ？ ……もしかして、誰かの影響だったり？」

私に問われると、ちょっと彼は目を泳がせた。両手をぎゅっと握り合わせたり、開いたりしてから、決まり悪げに苦笑していた。照れてるのかな？

「たまには、何か音楽も聞いてみようかなって……友達の影響で」

多分、今の私は変なニヤけ方をしてるはずだ。この幼馴染が、ようやく色んなものに、周りの人に興味を見出してくれた！ どこか照れくさそうに言ったあたり、気になる人でもできたのだろうか。

　彼は先ほどまで収まりが悪そうにしていた手を合わせ、ウキウキと表情を明るくした。

「ね、A！ AのおすすめってこのCDなの？ なら僕も買おうかな。せっかくなら色んなジャンルを聞きたいし」
「最高！ 私も会計まだだから、並んでくるね」

　やっぱり日曜日は最高の日だ。幼馴染の新しい発見まであったんだから！

　私が上機嫌で列に向かうと、その背中に「ねぇ」と甘えた声がかけられた。振り返ると、彼の表情は「今ひま？」と聞く時と同じ表情をしていた。

「一緒に並ぼ？」
「……やっぱり身内至上主義者！」

──────
「こんなこと、言いたくない。A以外に影響されることなんてあり得ないのに」

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