意味がわかるとヤンデレな日常【名前変換/短編集】

22,　さよなら日常 ページ42

「Aちゃーん、ちょっと来て！」

　クラスメイトの--さんが私を呼んだ。この子はたしか、噂話にやたら詳しい子だ。何やら興奮した様子で息を荒くしている。彼女はどうしてか、親友のことは押しのけて、私の肩を叩いた。

「ねぇねぇっ、K君ってAちゃんのこと好きらしいよ」

「それもまた噂でしょ？」

　思わず即答した。

　だって私とK君の接点なんて、科学の実験とカラオケの2回だけ。そんなに簡単に人を好きになるワケないのに！

　恋愛の噂話が好きな子達は、往々にして当てにならないことを言う。些細なことで騒ぎ立てては、きゃあきゃあ言ってありもしないことを並べ立てるのだ。

　私が呆れて目を細めると、--さんはニヤリと笑って、片手で近寄るように合図した。彼女は両手でメガホンの形を作り、耳元にそれを当ててささやいた。

「実は今回、ご本人から言質取ってまぁす！」

　驚いて私は数歩距離を取る。私に向かってぐっと親指を立てる彼女は、仕事をし終わった時のように達成感に溢れた顔をしていた。

「それでそれで〜実際、告白されたら付き合っちゃう感じ？それとも、いつもクラスに来る幼馴染の男子って彼氏なの？」

　たしかにこれまで何度か恋愛について想像する機会はあったけど、結局具体的なことは何にもイメージできなかった。

　どうしよう、誰かに相談してみなきゃわからないや——。

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