20, 隣の貴方へ/幼馴染 ページ38
いつも通りの昼休みなら、彼から私に話しかけにくる。だけど今日だけは私から彼の教室に出向いた。なんとなくだけれど今日は来ない気がしたから……(前のこと)もあって。
隣のクラスに顔を出すと、はたして彼はそこにいた。彼は私に気がつくと、意外そうに慌てて机の上の筆箱を派手にひっくり返した。
「大丈夫？」
「い、今行くから待っててA」
素早く散らかったペン類を片付けた彼は、パンと手を払ってからこっちに来た。思っていたよりも前のことを気にしていないらしい。私はいつもの場所へ彼を連れ出した。
階段に腰掛けて彼は言う。
「今日はそっちから誘ってくれたね〜。いつも僕から話に来るのに」
「うん、たまにはいいじゃん？」
私は彼の隣に座った。特に何を言いたくて呼んだわけでもないから、話は切り出せず口をもごもごうごかすだけだけれど。
何も言わない私に痺れを切らしたのか、彼は座ったままこちらに体を向けた。
「僕達ってさ、幼馴染同士だよね」
「うん、どうしたの急に」
私が戸惑っていると、彼は真剣な顔をした。端正な顔が、いつもの穏やかな雰囲気ではなく、目力の強い真面目な空間をまとう。やっぱり前回のことが尾を引いているのかな。自分の生唾を飲む音がやけに大きく聞こえた気がした。
「ずっと一緒だよね？」
私はなんとなく理解していた。この言葉を心から受け入れると言わなければ、その姿勢を見せなければ、私達の友情は終わってしまうと。中途半端な態度は取れないと。
「そうだよ」
大きく頷いて言う私も、両手をぎゅっと握り合わせて緊張していた。不自然な沈黙が心地悪い。
私の言葉が彼の中でどう響いたのかはわからないけれど、少なくとも悪い印象は持たれなかったらしい。
「そうだよね」
反芻するように軽く首肯しながら何度かそう呟く彼。彼は1度頭を垂れると、心臓の位置を抑えながら笑い出した。
「あーよかったぁ〜！前に僕から立ち去ったの、ちょっとだけ気にしててさ」
彼は既にいつも通りの柔和な様子に戻っていた。思わず緊張感がほぐれて、体が軽くなった気がする。
いつも通りに戻った私達は、今日も休み時間いっぱいまで話したから教室に戻った。喧嘩もしていないのに居心地悪くなるなんて珍しい。けれど、こうして仲直りできるなら偶にはこんなのも悪くない。
──────
「あの時の僕はどうかしていた。ほんの少しでも彼女から離れるなんて、気が狂う」
-20, 隣の貴方へ（裏面）→←-19, 歌には愛を（裏面）
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バニー芳一(プロフ) - natukiさん» 読んでいただきありがとうございます！お好みのヤンデレがお届けできて恐縮です (3月25日 12時) (
レス) id: e2dede88a8 (このIDを非表示/違反報告)
natuki(プロフ) - すごく面白いです！！ヤンデレ系のお話大好きなんです！！バニー芳一 さん天才ですね✨ (3月25日 10時) (レス) id: 6c526090d7 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - えふあさんさん» 読んでいただきありがとうございます！大学生の病み方は受け入れられるか若干不安だったので、嬉しいです (1月15日 20時) (レス) id: be5118262c (このIDを非表示/違反報告)
えふあさん - 大学生さんのヤンデレが見事わたしの性癖だったのですごい好きです…！ほかの子達のヤンデレも読んでて楽しかったです！！ (1月15日 20時) (レス) id: 1f387bf1d2 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - 碧花さん» 読んでいただきありがとうございます！なかなかない構成ですが、挑んで良かったです (1月13日 23時) (レス) id: e63de7a269 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バニー芳一 | 作成日時：2023年8月4日 11時
