-17, 知らない男（裏面） ページ32
ほとんど日課となっている、屋上前階段での雑談。2人きりの時間は貴重だ。僕は何度だってここに集まって、幸せと歓喜を噛み締める。
だが、今日だけは違った。
「K君が割れた破片を片付けてしょんぼりしてたのは面白かったな」
Aの口からその名前を聞いたのは初めてだった。たしかに悪ガキで有名なやつだから説明はいらないけれど。でもその名前を聞いた時、頭が真っ白になった。
「普段あれだけ騒ぐのにさ、ぴえんの顔文字と同じ顔で。可哀想だから許しちゃった」
透明の金槌で殴りつけられたかのような衝撃。キィンと耳鳴りが喧しく、世界から音が消えていく。彼女の笑顔はたしかにそこにあるのに、透明で分厚い氷の壁が阻んでいるかのように距離を感じた。
なんでそんな奴の話で楽しそうに笑うの？
そいつと過ごすほうが面白かった？思い出し笑いするほど良い時間だったの？Aは僕よりもそいつの方が好きなの？
僕以外のやつと笑い合ったの？
嫌い
きらい
だいっきらいだ!
……だいすき、なのに。
僕以外の奴に笑顔を向けるAを許せなくなる、この気持ちは何なの？
「……どうしたの？」
ぱきん、とガラスが割れるような音と共に意識が現実に引き戻される。Aが首を傾げて僕の顔を覗き込んでいた。
「えっ？あー、いや、なんでもない」
それからどんな会話をしただろうか、心が乱され過ぎていてうまく思い出せない。
今までこんなことなかった。Aの話に知らない人の名前があっても、何にも思わなかったのに。楽しそうに話すAさえ見られればそれでよかったのに。
今は彼女の言葉1つで俺は狂えるし、昇れるし、悪人にもなるみたいだ。Aの言葉が、Kって奴の存在が、僕という人間の輪郭を揺らしている。僕はとにかく動揺して、その場を離れることしかできなかった。
「ごめん、昼休み終わったら僕も実験の授業だからさ。早めに準備しに行くね」
目を見開いた彼女を僕は置いていった。初めて僕からAを置いていった。その事実は、教室に戻る前に僕の背に重しとなってのしかかってきた。
「僕がAから離れた……僕が……僕のせいで2人の時間が終わっちゃった」
嫌いにならないで。それが本心なのに。
これが恋なら苦しすぎるよ。
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バニー芳一(プロフ) - natukiさん» 読んでいただきありがとうございます！お好みのヤンデレがお届けできて恐縮です (3月25日 12時) (
レス) id: e2dede88a8 (このIDを非表示/違反報告)
natuki(プロフ) - すごく面白いです！！ヤンデレ系のお話大好きなんです！！バニー芳一 さん天才ですね✨ (3月25日 10時) (レス) id: 6c526090d7 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - えふあさんさん» 読んでいただきありがとうございます！大学生の病み方は受け入れられるか若干不安だったので、嬉しいです (1月15日 20時) (レス) id: be5118262c (このIDを非表示/違反報告)
えふあさん - 大学生さんのヤンデレが見事わたしの性癖だったのですごい好きです…！ほかの子達のヤンデレも読んでて楽しかったです！！ (1月15日 20時) (レス) id: 1f387bf1d2 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - 碧花さん» 読んでいただきありがとうございます！なかなかない構成ですが、挑んで良かったです (1月13日 23時) (レス) id: e63de7a269 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バニー芳一 | 作成日時：2023年8月4日 11時
