17, 知らない男/幼馴染 ページ31
「さっきの実験、案の定メスシリンダーが倒れてさぁ……」
「大変だったねぇ」
理科の実験で散々だったことを話すと、幼馴染の彼はよく笑った。いつもこうして話を聞きに来てくれる彼。
屋上前の階段で2人話していると、多少大変なことがあっても気持ちがリセットできる気がする。実験用具を壊したことは怒られなかったが、先生が結構青い顔をしていたので申し訳なかったのだ。胃が疲れた。
私は「散々だったよ」と苦笑して続けた。
「すごい気を遣ったし大変だったけど……K君が割れた破片を片付けてしょんぼりしてたのは面白かったな」
教室でふざけて暴れまわる同級生が、眉を綺麗なハの字にして「ごめん」しか言わなくなった様子を思い出す。ほとんど小動物だった。
「普段あれだけ騒ぐのにさ、ぴえんの顔文字と同じ顔で。可哀想だから許しちゃった」
私が話にちょっと尾鰭を付けて笑っている間、その場に響く笑い声は私のものだけだった。
目の前にいる幼馴染は、ピクリとも口角を動かしていなかった。一切の感情を感じさせない、心なしか白くなった顔。私も笑っていられなくなった。
「……どうしたの？」
「えっ？あー、いや、なんでもない」
絶対なんでもないわけない、私でもわかる。いつもの笑顔が取り繕ったハリボテに見えて、急にとてつもない寂しさに襲われた。
「大丈夫？顔色変だったし、疲れてるんじゃないの」
「平気だよ？」
彼は首を横に振る。頑として私の心配を受け取らないつもりだ、そう気がつくと、より彼との間に大きな距離がついた気がした。こんなに近くにいるのに。どうして。
「ごめん、昼休み終わったら僕も実験の授業だからさ。早めに準備しに行くね」
……彼が先に教室に戻るのは初めてのことだった。去り際の背中を見つめると、不思議と周囲の温度が下がっていくような感覚に襲われた。
「いや、何考えてるんだろ、私！移動授業なんて普通じゃん！」
いつもの私を取り戻そう。今の感覚は全部勘違いのはずだ。いつも一緒にいて、同じパターンの行動を繰り返して、珍しく違うパターンになったからちょっと調子が狂っただけ。
そう自分に言い聞かせるわりに、私の胸の中はざわついたままだ。
──────
「なんでそんな奴の話で楽しそうに笑うの？嫌いきらい、だいっきらいだ！……だいすき、なのに」
-17, 知らない男（裏面）→←-16, 私の知る人（裏面）
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バニー芳一(プロフ) - natukiさん» 読んでいただきありがとうございます！お好みのヤンデレがお届けできて恐縮です (3月25日 12時) (
レス) id: e2dede88a8 (このIDを非表示/違反報告)
natuki(プロフ) - すごく面白いです！！ヤンデレ系のお話大好きなんです！！バニー芳一 さん天才ですね✨ (3月25日 10時) (レス) id: 6c526090d7 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - えふあさんさん» 読んでいただきありがとうございます！大学生の病み方は受け入れられるか若干不安だったので、嬉しいです (1月15日 20時) (レス) id: be5118262c (このIDを非表示/違反報告)
えふあさん - 大学生さんのヤンデレが見事わたしの性癖だったのですごい好きです…！ほかの子達のヤンデレも読んでて楽しかったです！！ (1月15日 20時) (レス) id: 1f387bf1d2 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - 碧花さん» 読んでいただきありがとうございます！なかなかない構成ですが、挑んで良かったです (1月13日 23時) (レス) id: e63de7a269 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バニー芳一 | 作成日時：2023年8月4日 11時
