-2, 隣のクラス（裏面） ページ4
僕がAに話しかけると、教室中から視線を浴びることになる。隣のクラスからわざわざ何回も来ているなんて、そりゃ気になるよね。
見せつけてんだよ、バァカ。
それに、あのやり方ならAのほうから2人きりになってくれる。男子として凄く燃える話だ。
——それは彼女が教室に戻ってからの話。
「1人にされたら……また何も感じられなくなるのに」
屋上前に取り残された僕は、その場に座り込んで項垂れた。こうして膝を抱えるのは何回目だろう。
僕がAにいつも会いに来るのは、幼馴染だからって理由じゃない。Aに会う以外に楽しいことは何もないからだ。
幼いころから、ろくに何にも興味を示さない僕を家族は心配した。母は特に心配して、僕を産むとき産婦人科で仲良くなったママ友さんによく相談したらしい。それがAのお母さんで、僕達の最初の接点だ。
たしかに物心ついたころから、世界が全部灰色に見えていた気がする。何にも興味がわかない。何も感じない。絵を描くのだって「描きましょうね」と言われたから書いたし、サッカーだって「ボールを蹴ってみましょう」と言われたからやってあげただけ。
自分の意思で近づきたいと思ったのはAが初めてだった。
彼女が僕に感情をくれたんだ。そのまなざし、ぬくもり、声に仕草。それらが絵具となって僕の世界を染め上げていった。おかげで僕はこうして生きてる。
……まあ、Aはそんなこと全部知らないんだけどさ。
大体、身内至上主義の寂しがりってなんだよ。僕がAを好きなのは、幼馴染だからじゃない。Aだからだよ。小さいころから一緒なら誰でもいいわけじゃないのに。
そんな風に言われたら笑うしかないよ。だってこんなにわかりやすくしても僕の気持ちが届いてないなんて、脈ナシってことでしょ？
僕の恋は叶わないかもしれない。そう思うたび、胸の内側を掻きむしりたくなるような焦燥と絶望に襲われる。だから現状を維持するだけ。伝えない、隣にいる。そして抑え込んだ恋心がまた僕の不安を駆り立てる。
僕がAに抱く気持ちはきっと愛であり、汚い執着でもあるんだ。それすらも、君に貰った愛おしい感情の1つだけれど。僕は焦れて頭を掻く。
「ああもう、偶然装って放課後にもっかい会いに行こう」
何度だって会いに行くよ。いつか一生一緒にいられるようになるまで。君が僕だけに笑いかけてくれるようになるまで。
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バニー芳一(プロフ) - natukiさん» 読んでいただきありがとうございます！お好みのヤンデレがお届けできて恐縮です (3月25日 12時) (
レス) id: e2dede88a8 (このIDを非表示/違反報告)
natuki(プロフ) - すごく面白いです！！ヤンデレ系のお話大好きなんです！！バニー芳一 さん天才ですね✨ (3月25日 10時) (レス) id: 6c526090d7 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - えふあさんさん» 読んでいただきありがとうございます！大学生の病み方は受け入れられるか若干不安だったので、嬉しいです (1月15日 20時) (レス) id: be5118262c (このIDを非表示/違反報告)
えふあさん - 大学生さんのヤンデレが見事わたしの性癖だったのですごい好きです…！ほかの子達のヤンデレも読んでて楽しかったです！！ (1月15日 20時) (レス) id: 1f387bf1d2 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - 碧花さん» 読んでいただきありがとうございます！なかなかない構成ですが、挑んで良かったです (1月13日 23時) (レス) id: e63de7a269 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バニー芳一 | 作成日時：2023年8月4日 11時
