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16, 私の知る人/親友 ページ29

「A、次の授業って実験あるだろ」

「え?ああ、たしかそうだね」

 同級生のK君に話しかけられた。クラスのお調子者が私に話しかけるなんて珍しい。多分ちゃんと話したことないのに。なんでだろう。

「実験の班、多分自由に組んでいいだろうから組もうぜ。普段一緒のやつが休みで2人必要なんだよ」

2人必要——つまり、いつも私と親友が一緒にいることを見越しての誘いだった。

「そういうことね、いいよ。後であの子にも伝えておくから」

私がそう言うとK君の表情がぱぁっと明るくなる。

「サンキュ。絶対だぞ」

別に念を押さなくても逃げたりしないのに。よくわからない人だ。私が頷くと、彼はそそくさと離れて男子の集団に紛れていった。いつも通り小突きあいをしているらしい。

 そんなに班員不足解消が嬉しいのかな。あいつ、前に温度計を割ってたけれど。実は実験好きなのかな?

「なんのお話してたの?」

 振り返ると、私の親友が不思議そうに首を傾けていた。私が理科の班分けについて話すと、彼女は唇に親指を当てて考え始める。

「どうしてAを誘いに来たんだろう、不思議だね。K君とAって仲良かったっけ?」

「ちゃんと話したのは今日が初めてだよ。多分、2人必要って言ってたから私達なんだと思う」

 私の答えに得心いった様子で「そうだよね」と頷いた彼女は、いつも通りの顔に戻って教室移動の準備を始めた。

 一体何が気になったんだろう。なんのために確認したのか聞きたかったけれど、彼女は今のことを気に留めていないようだ。過ぎた話と思われたことをもう1度持ち出すのは気が引ける。

 例えば幼馴染と私が話しているときの周りの目のように、私とK君の関係を勘違いしたとか……?いや、そんなわけないか。この子は人をからかったりしないタイプだし、恋愛話には疎い方だ。

 でも、一応勘違いされないようにはしておきたい。

「K君、実験用具を壊しそうなんだよなぁ」

私が遠くを見るようにジェスチャーすると、彼女はくすくす笑いながら肩を震わせて口元を押さえた。既に温度計を割ったあいつが、ビーカーやらメスシリンダーやらを割るのは想像に易いこと。私も一緒になって笑った。

──────

「私が知らないはずがない。知ることが私の愛し方なのに」

-16, 私の知る人(裏面)→←-15, 満員と近接(裏面)



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設定タグ:ヤンデレ , 夢小説 , 芳一のヤンデレシリーズ   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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バニー芳一(プロフ) - natukiさん» 読んでいただきありがとうございます!お好みのヤンデレがお届けできて恐縮です (3月25日 12時) (レス) id: e2dede88a8 (このIDを非表示/違反報告)
natuki(プロフ) - すごく面白いです!!ヤンデレ系のお話大好きなんです!!バニー芳一 さん天才ですね✨ (3月25日 10時) (レス) id: 6c526090d7 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - えふあさんさん» 読んでいただきありがとうございます!大学生の病み方は受け入れられるか若干不安だったので、嬉しいです (1月15日 20時) (レス) id: be5118262c (このIDを非表示/違反報告)
えふあさん - 大学生さんのヤンデレが見事わたしの性癖だったのですごい好きです…!ほかの子達のヤンデレも読んでて楽しかったです!! (1月15日 20時) (レス) id: 1f387bf1d2 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - 碧花さん» 読んでいただきありがとうございます!なかなかない構成ですが、挑んで良かったです (1月13日 23時) (レス) id: e63de7a269 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:バニー芳一 | 作成日時:2023年8月4日 11時

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