10, キスの小道/親友 ページ20
裏面ではない話にハートが付いていたので、裏面なしのピュアストーリー部門×3に入ります。
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「お待たせ〜」
「あ、欲しい本買えた?」
私はたった今買ってきた新作の小説を見せた。私はある程度小説とか文学に興味があるが、親友はそんなに本を読まない。私が本屋に寄るとき彼女は写真集を立ち読みしている。
今日は『世界の小道』を見ていたようだ。表紙がオシャレだから私も本を覗いてみる。テーマパークのような明るい色の壁に挟まれた、細い道の写真がある。
「細すぎてすれ違い辛そう」
「もし私達が行っても、並んで歩けないね!メキシコにあるんだって」
苦笑する親友に頷いて同意する。メキシコか、アメリカよりちょっと南だったっけ。主役である写真を邪魔しない位置に、説明文が書いてある。曰く、これは『口付けの小道』らしい。思春期としてはちょっと気になる単語だ。この本曰く、「この小道でキスすると15年間は幸せになれる」らしい。
「ロマンチックだねっ!Aはこういうの好き?」
「迷信はそんなに信じないけど、気にならなくはないかな?」
私の答えが面白かったのか、より一層楽しそうに目を開いた親友。彼女の細い指が説明文をなぞる。読み上げる声と共に文字を追いかけた。
こうしていると、本当に2人で小道に来たかのようだ。日本とは違うカラッとして暑い気候。野良猫が秘密の集会所にするくらい細い道を、探検するみたいに通っていく。子供の頃、冒険とかして見たくなった時と同じ気持ちだ。
「『……そして諸説あるが、キスをしなかった場合7年の不幸が降りかかることもある』って、ほんと?A、これ」
「う、うん私も読んだ……本当に私達だけで行ったら、どうすればいいのかって感じだね」
本当に行った気分になっていた自分としては、何となく嫌な1文だ。おのれ、諸説あるならもっといい説を載せてよっ!
親友はまごつきながら言う。
「ふ、2人で行ったらかぁ。親友同士のキスって、女の子同士ならノーカン、かな……?」
真っ白な頭では考えがまとまりきらない。彼女の言葉に曖昧に頷く。
「女の子同士のキスってノーカン……か、それはまあたしかに、そうなのかも?」
「私も、ちょっと、そのわかんない」
思春期の私達には刺激が強すぎて、そそくさと写真集を棚に戻した。この後のウィンドウショッピング、冷静に回れるだろうか。
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バニー芳一(プロフ) - natukiさん» 読んでいただきありがとうございます!お好みのヤンデレがお届けできて恐縮です (3月25日 12時) (レス) id: e2dede88a8 (このIDを非表示/違反報告)
natuki(プロフ) - すごく面白いです!!ヤンデレ系のお話大好きなんです!!バニー芳一 さん天才ですね✨ (3月25日 10時) (レス) id: 6c526090d7 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - えふあさんさん» 読んでいただきありがとうございます!大学生の病み方は受け入れられるか若干不安だったので、嬉しいです (1月15日 20時) (レス) id: be5118262c (このIDを非表示/違反報告)
えふあさん - 大学生さんのヤンデレが見事わたしの性癖だったのですごい好きです…!ほかの子達のヤンデレも読んでて楽しかったです!! (1月15日 20時) (レス) id: 1f387bf1d2 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - 碧花さん» 読んでいただきありがとうございます!なかなかない構成ですが、挑んで良かったです (1月13日 23時) (レス) id: e63de7a269 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バニー芳一 | 作成日時:2023年8月4日 11時