意味がわかるとヤンデレな日常【名前変換/短編集】

-8,　帰路の騒動（裏面　後編）/？？？ ページ16

盗聴、盗撮、お手の物なAの親友こと私。本当はテスト前だから勉強しないといけないけれど、1週間テスト対策をし続けたら、A欲が限界になってきた。

「A、今日は集会所に行くって言ってたかな……どうだったっけ、録音確認しなきゃ」

　彼女が言うには、自治会員にうちの学校の卒業生が多いから過去問が置いてあるらしい。窓の外から覗くと、はたして彼女はそこにいた。真剣に過去問を解いている横顔は、芸術作品だ。

「ああ偉すぎる、やっぱりAは真面目に勉強してるよね、流石です……拝む……」

愛用の消音カメラアプリを連打する。どうやら今日は暗くなるまで頑張るつもりらしい。なら私もここで遠目に見守ろう。

　Aが帰り支度を始めたとき、集会所の出口前が見える位置に隠れて張り込みを始めた。しばらく待っていると、Aと背の高い男の人が出てきた。あの人はさっき授業してた人かな？

(これは初めての試みだなぁ)

Aだけを追いかけるのは慣れっこだが、他の人も一緒にいるのは初めてだ。

　不安だけど、私の天使さまは頑張って長時間勉強したんだ。私だってなにか新しい試みを頑張ろう！

　コツは近づきすぎないこと。距離があるので会話内容は聞こえないけれど、カメラに専用のレンズを取りつけたため、顔はよく映る。

(今「うーん」ってした！？首傾げるの可愛いいい！)

左に数度小首を傾げるのは反則級！天使を超えて愛しさが限界突破し、私も声と涙を堪えるのに必死だ。

——ガサリ

(……あ、やっちゃった！)

撮るのに必死になりすぎた凡ミス、真下にあった紙袋を踏んじゃった！頭は真っ白だが、染みついたストーカーの勘で電柱に体を重ねる。もう、なんでこんなところにポイ捨てするかな！？

　どうしよう、今あの男の人こっちを見た。バレてる、すぐに離脱したほうがいいかな？あ、でもなんか貰ってる……あれはチョコレートかな？チョコレート食べてるAも激写したいなぁ……可愛すぎてもはや女神。

　結局ずるずると家の前ギリギリまで私は2人をつけていた。さて、可愛いあの子を見れたから男の人には感謝しないといけないけれど、見つかるわけにはいかない。

「もっかい覗きに行きたいけど、これは難しいかなぁ……うう、もっとAが見たかった」

　名残惜しくて何度も振り返りながら私はその場を後にする。さて、後で服と靴を変えてもう1回覗こうか。

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