-8, 帰路の騒動（裏面 前編）/大学生 ページ15
Aさんと並んで歩く。決して沈黙が苦痛なわけではないが、ドキドキして言葉が出てこない。勉強を教えている時は普通に話せるのに。
いつもは答案用紙を挟んでいるからか？計算ドリルのおかげで俺は会話できているのか？
意味のわからない自問自答をしていると、Aさんが沈黙を破った。
「あの、すみません。いつもご迷惑をおかけしてますよね」
彼女が申し訳なさそうに下を向く。そんなこと気にするなって言ってるじゃん。子猫かよ可愛いな。
「全然。むしろ役得というか」
不思議そうに首をかしげる彼女。まずい、また失言した。
「こっちの話だよ」
と苦しまぎれに口角をあげれば、彼女はごまかされてくれる。ありがたいけど、本当に悪い奴に狙われそうで、大丈夫なのかこの純粋さ。
——ガサリ
どうやら本当に狙われてるらしい。
ちらっと後ろを見ると、電柱の後ろに隠れるシルエットが見えた。だが、それは意外なもので俺の頭にクエスチョンマークが躍る。
明らかにアレは子供だし、服の特徴からして少女だ。
ポスターの特徴通りの男なら対応も心得ているが、子供相手にはどう対応したらいいかわからない。Aさんの友達かもしれないし、変に騒いで彼女をあまり不安にさせたくない。なにか、何かないか……。
「そうだ、これあげるよ」
本当に偶然としか言えないが、今日はチョコレートを持ってきていた。本当は勉強途中に渡そうと思ったが、Aさんの集中力が高すぎてあげるタイミングを失ったまま持て余していた物だと。
受け取った彼女は「わぁ！」と嬉しそうに笑顔を零す。いつもの俺ならそれを手放しに喜んでいたけど、今は緊急事態だ。緊張の方が勝っている。
なにか冗談を言ったり、テストのことについて話したり。その合間に後ろをつけてくる少女のことも確認する。なんだこれ、俺ボディーガード映画に出演してるの？
そうしているうちにAさんの家まで到着してしまった。とりあえず、何も事件にならなくてよかった……ついついため息が出る。
「それじゃ、また今度」
「はい、また！」
ぺこりとお辞儀して家に入る彼女が、「ただいま」と言って玄関の戸を閉じるまで見届ける。そして、次に来た道を振り返ると、あの少女は消えていた。
「……ポスターにあった不審者とは違った、よな？ なんだったんだ？」
なんにせよ、俺の恋に新たな問題が増えたのは間違いないようだ。
-8, 帰路の騒動（裏面 後編）/？？？→←8, 帰路の騒動/大学生+？？？
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バニー芳一(プロフ) - natukiさん» 読んでいただきありがとうございます！お好みのヤンデレがお届けできて恐縮です (3月25日 12時) (
レス) id: e2dede88a8 (このIDを非表示/違反報告)
natuki(プロフ) - すごく面白いです！！ヤンデレ系のお話大好きなんです！！バニー芳一 さん天才ですね✨ (3月25日 10時) (レス) id: 6c526090d7 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - えふあさんさん» 読んでいただきありがとうございます！大学生の病み方は受け入れられるか若干不安だったので、嬉しいです (1月15日 20時) (レス) id: be5118262c (このIDを非表示/違反報告)
えふあさん - 大学生さんのヤンデレが見事わたしの性癖だったのですごい好きです…！ほかの子達のヤンデレも読んでて楽しかったです！！ (1月15日 20時) (レス) id: 1f387bf1d2 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - 碧花さん» 読んでいただきありがとうございます！なかなかない構成ですが、挑んで良かったです (1月13日 23時) (レス) id: e63de7a269 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バニー芳一 | 作成日時：2023年8月4日 11時
