-6, なつまつり（裏面） ページ12
うちの自治会が地域祭りで出展するのは、やきそば、わたあめ、ジュース屋。あとは小学祭向けの輪投げなんかも取り扱っている。
今回、俺はわたあめ屋を担当したが、これが地獄だった。無限に割り箸をぐるぐる回す手首の痛み、暑さ、加えてやたら人気で休む暇もない3重苦。
「あいつマジでふざけてるな……」
交代するはずの＿＿さんが遅刻したせいで、休憩が40分遅れた恨みを吐く。やっとありつけたエアコンのもと、俺は机に突っ伏した。
だが、彼女の来訪で今回ばかりは＿＿に感謝することになる。
「えっと、こんにちは。鍵、空いてたので来ました」
「……Aさん！？」
神様、無賃労働わたあめ地獄を耐えた俺への褒美でしょうか。彼女が笑う。
「外が暑すぎて……この集会所は天国ですね」
俺にとっても、たった今天国に変わったところだ。いつもの席に座るように促すと、彼女はいつも計算ドリルを置く場所に荷物を置いて座った。
今わたあめ屋の話をしたら、後で来てくれるだろうか。そんな下心を持ちつつ、彼女となんとなく雑談する。Aは「ここの夏祭りは毎年変わらず開催してくれる」と言っていたが、俺にとっては毎回違ったものだ。
それは担当する屋台が違うと言う意味でもそうだし、君が成長していくという意味でも。
初めてAさんを見た時は、ヨーヨー釣りの屋台だったな。隣にいたガキどものせいで跳ねた水が浴衣についても、気にせず一生懸命ヨーヨーを狙っていたのが懐かしい。あれが一目惚れのときだった。
毎夏、吐きそうな暑さの中で、君は大人になっていく。可愛らしさも色っぽさも増して、その度に俺は恋を更新させているのだ。
しばらく話した後のこと。
「さて、そろそろサッカー部終わるかな？」
「サッカー？ ……ああ、あの同級生の子と待ち合わせ？」
男の子と待ち合わせ。じわりと黒い絵の具が滲むように、俺の中に邪な心が芽生えていく。俺と話しながらもその同級生のこと考えてた？ 男子と2人で屋台巡りって、デートだろほぼ。行ってほしくない。行かせたくない。Aさんの夏は、俺にとっての特別だ。
「待って、Aさん」
自治会長の爺さんが俺に持たせたジュース。まさかこんなところで彼女を釣るために使うとは、到底思わなかった。
「向こうから連絡が来るまでは、もう少し休憩していきな？ 外、暑いからさ」
休憩時間、何分までだっけ。どうでもいいか。遅刻した分だけ＿＿にやらせておこう。妥当妥当。
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バニー芳一(プロフ) - natukiさん» 読んでいただきありがとうございます！お好みのヤンデレがお届けできて恐縮です (3月25日 12時) (
レス) id: e2dede88a8 (このIDを非表示/違反報告)
natuki(プロフ) - すごく面白いです！！ヤンデレ系のお話大好きなんです！！バニー芳一 さん天才ですね✨ (3月25日 10時) (レス) id: 6c526090d7 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - えふあさんさん» 読んでいただきありがとうございます！大学生の病み方は受け入れられるか若干不安だったので、嬉しいです (1月15日 20時) (レス) id: be5118262c (このIDを非表示/違反報告)
えふあさん - 大学生さんのヤンデレが見事わたしの性癖だったのですごい好きです…！ほかの子達のヤンデレも読んでて楽しかったです！！ (1月15日 20時) (レス) id: 1f387bf1d2 (このIDを非表示/違反報告)
バニー芳一 - 碧花さん» 読んでいただきありがとうございます！なかなかない構成ですが、挑んで良かったです (1月13日 23時) (レス) id: e63de7a269 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バニー芳一 | 作成日時：2023年8月4日 11時
