泣いていいんだよ ページ1
俺の彼女の話をしよう。俺には自慢の彼女がおる。
それはもうめっちゃむっちゃ超絶ド級ハイパーミラクルベリーキューティプリティスウィートな可愛い可愛い天使みたいな彼女が。
…おん、ちょっと盛った。
何から話そかなぁ。まあ、まずは馴れ初めからやろか。
Aとの出合いは春高に出た時。
初戦敗退と三年生の引退で俺はどうしようもなく狼狽えてた。
セッターとしての責任とか、そういうのが全部のしかかってきて、チームメイトと顔を合わせんのが辛なって、外のベンチまで走った。
ベンチはキンキンに冷えとって、試合後の火照った体にはちょうど良かった。
そんな俺に上からのぞき込むみたいにして声をかけてきたやつがおった。
吹奏楽部として俺らの応援に来てくれとったAやった。
「っっくりした、なん」
「…お疲れ」
Aはそういうと無造作にペットボトルを投げる、反射でキャッチしたら自販機で買ったらしいスポーツドリンクやった。
試合が終わってむしょうに喉が渇いてることに気づいてその場で飲み干した。
「一応、ありがとうな」
「別に」
……可愛くなっ。いや俺かて可愛いありがとうやなかったけどそれにしても別にってなんやねん。なんなん、こいつ。
「主将さんから頼まれてきただけやし」
そう付け加えられてようやく理解する。最後の最後まで迷惑かけてんなあ俺。
「北さん、なんか言うとった?」
Aはちょっと眉をしかめて斜め上を見た。付き合った後にようやく、それがなんかを思い出そうとする癖やってわかった。
そん時はただの変顔にしか見えんかったけど。
「風邪ひくから、早よ戻ってこい。お前はなんも気にする必要ない、やったかな」
なにもかもお見通しな北さんらしいセリフやった。思わず涙が出そうになって慌ててこらえた。
「…?どしたん?」
俺の異変に気づいてAが顔を寄せてくる。
Aの澄んだ綺麗な目に動揺して「なんでもないわ!察しろ!あんま寄んな!」と叫ぶ。俺は小学生か。
「…泣いてるん?」
「泣いとらんわボケ!」
そう言った瞬間涙がこぼれせっかくの威勢も消えていった。
「泣いてもええよ。別に恥ずかしいことちゃう」
Aはそういうと何にも言えんくなった俺の頭を撫でて体育館へと戻っていった。
「へ…?」
寒空のしたポツンと取り残された俺は硬直するしかなかった。
「よしよしなんてされたん、初めてやねんけど」
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作者名:五百雀 | 作成日時:2021年3月1日 16時